回送電車の女 第三部
七十九
電車の中では睦夫がホームに大勢居る女子高生たちに気づいて慌てていた。しかし股間を露わにしたままどうすることも出来ない。女子高生のうちの一人が携帯で写メを撮り出すと、真似して皆が携帯を取り出して撮り始める。
「ねえ、これ。ネットにアップしちゃおうか。」
「それ、やばいんじゃない。」
「平気よ。すぐ消しちゃえば。どんどん他のひとが拡散するから、誰が最初にアップしたかなんてすぐに判らなくなっちゃうもの。」
「それいいわね。私もやっちゃお。」
電車の中では女子高生たちが次々に携帯で自分の裸を撮り始めるのに睦夫は気づいて青ざめる。
「おい、やめろっ。やめろってば・・・。」
しかし睦夫の声はしっかり閉められた電車の分厚い窓越しには女子高生たちに届いてはいかないのだった。
完
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