回送電車の女 第二部
四十七
並走するパトカーのサイレンと思っていた音は何時の間にか止んでいた。頭から被された頭巾で何も見えない優愛には車外から聞こえてくる音で自分が何処を走っているのか察するしかなかったが、街中らしい物音は次第にしなくなっていた。
「ねえ、拘置所って言ってたけど何処にあるの。それは?」
「それはまだ明かせません。着けばわかります。」
車の揺れとエンジン音から優愛にはどこか山の上のほうへ登りつつあるように感じられた。
「ねえ、もう街中じゃないんでしょ。この頭巾は必要ないと思うわ。もう取って頂戴。」
「今は護送中で運転をしているので無理です。もうじき着きますので。」
そう言われると、それ以上は優愛には言うべき言葉も思い浮かばなかった。
突然、車はキィーっというブレーキ音と共に停められた。運転手が降りる気配が感じられたと思う間もなく後部座席のドアも開けられたらしく、ドア上の把手に繋がれた手錠が外されたらしかった。しかし着いたら外すと言っていた頭巾は一向に外して貰える気配はなく腕を取られて車外に連れ出されると、前手錠だったものが、後ろ手錠に掛け替えさせられる。
「ねえ、もう頭巾を外してもいいでしょ。」
しかし男は頭巾を外す代わりにスカートのホックの方を外したらしかった。
「いやっ、何するの?」
続いてブラウスのボタンがどんどん外されていく。やっとのことで頭巾が外された時には優愛はほぼ全裸状態だった。
「ど、どういう事・・・? これって・・・。もしかして、騙したの? 貴方、刑事じゃないわね。」
優愛は辺りを見回しながら漸く騙されたことに気づいたのだった。そこはひと気のない山奥の林道の端らしかった。
「さっきの女の人もグルね。警察官じゃないんでしょ? どういうつもり? 何をしようとしているの?」
しかしその先は優愛が懸念した通りのことが起きる。後ろからドンと突かれると腕を撞くことも叶わないまま地面に転ばされる。裸の尻が男の方に剥き出しになる。男は既にズボンを下していた。
「いやっ。そんなの・・・。やめてっ。」
優愛の虚しい叫び声が山の中に響き渡る。
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