回送電車の女 第三部
六十
「ふふふ。いい恰好だ。」
「もう番組が始まっちゃうのよ。こんな格好じゃ外にも出れないわ。」
「スカートはお前が今穿いているパンティと交換だ。ストッキングも一緒にな。」
「え? ノーパンになれっていうの? だってこれから番組があるのよ。」
「なあに、ノーパンだってスカートさえ穿いてりゃばれないだろ。」
「そ、そんな…。無理よ。」
「無理じゃないさ。いやなら、このスカートを持って俺がこの部屋を出ていくまでだ。」
「え、駄目っ。そんなことされたら、私、この部屋から外に出れないわ。」
未央は一番近くの衣装室がどこだったか考える。
(そこまで人に見つからずに入りこめば・・・。)
しかし、一番近い衣装室といってもかなりの距離がある。誰にも見つからずに辿り着けるとは思えなかった。
「もう本番が始まるんじゃなかったのか?」
「うっ・・・。わ、わかったわ。ストッキングとパンティを脱げばいいのね。」
言い合いをしている時間はないと悟った未央は睦夫に言われるがまま急いでストッキングとショーツを抜き取る。
「先にそいつをこっちへ渡して貰おうか。」
悔しかったが男の機嫌を損ねてはならないと、渋々脱いだばかりのショーツとストッキングを丸めて男に渡す。
「じゃ、スカート返して。」
両手を出してスカートを取り返そうとする未央に男は冷たく言い放つ。
「まだ駄目だ。そこの窓の前に立つんだ。」
「え、窓の前? そんな・・・。」
「早くしろよ。」
未央は仕方なく窓ぎりぎりまで近寄る。
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