回送電車の女 第二部
三十一
チャラン。
聞き覚えのあるアラーム音がスマホでなる。
(LINEメールだわ・・・。)
どんな内容が送り付けられたか分からないので未央はそっと女性用トイレに向かう。個室に入ってロックをしっかり掛けてからスマホメールを開くのだった。
<今度は次の命令に従って貰う。従わなければ次の画像をネット上に流す>
添付されていた画像ファイルを開くと、未央は凍り付く。
それは先日、二度目に電車に乗せられて裸を晒させられた時のものに違いなかった。ただ、あの時はアイマスクを嵌めて裸を晒させられたと思っていたのだが、その画像にはマスクをしていない自分が写っていたのだ。
(アイマスクを着ける前の写真も撮られていたのだわ。)
あらためて未央は男の命令に従う他はないのだと悟る。
<こんな事、出来ません。放送事故になってしまいます>
そう返信を送った未央に送られてきた命令は、深夜の番組の中でミニスカにノーパンで出演して番組途中でしゃがんで裾の中を見せることとあったのだ。いつもプロデューサーの言いつけで身に着けているミニスカートで、パンチラだけはしないように細心の注意を払っているのに、パンチラどころかノーパンの裾の中を晒せというのだった。
<あそこの毛を全部剃り落としてやるんだ。誰かに気づかれたらベージュのガードルを穿いていましたと押し通せばいい>
未央の返信に対して返ってきたメールにはそう書かれていた。
(あそこの毛を剃り落とせだなんて・・・。そんな事で誤魔化せるのだろうか?)
未央は途方に呉れるが、結局は男の命令に従わざるを得ないのだと薄々わかっていた。
(あの番組ももうすぐ終わるし、放送で何かするのはこれっきりにして貰うという条件をつけたら納得してくれるかしら・・・。)
未央にはそのくらいの条件交渉をするしか思いつかないのだった。
その実行は結局『今夜も夜更かしニャンニャン』の打ち切り前の最終回になってしまった。番組開始前にプロデューサーから突然そう告げられたのだった。その事が未央にも命令を実行するのに背中を押す格好となった。
「今日のゲストは大物俳優を呼んであるんだ。未央ちゃんはもてなすホステス役だよ。キャバ嬢になったつもりでゲストをもてなしてくれ。」
プロデューサーの指示は未央をキャバ嬢扱いしていた。しかし未央はもう番組は終わりなのだと思いながらもそちらの指示にも従わねばならないのだった。
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