回送電車の女 第三部
五十五
(今はとにかく従う振りをして、何とか反撃する機会を伺うしかないのだわ。)
良子は観念してパンティを股間ぎりぎりまで下した格好で後ろ手の手錠で吊られたまま頭を下げて男の股間を探るのだった。すぐに熱い肉棒が頬に当たり、男が剥き出しにした男根の位置を知ると、アイマスクの下で目を瞑ってその肉棒を口に含むのだった。
良子は口の中で果てた睦夫の精液を全部呑み込むことを強要された。そしてそれを拒否することは良子には出来ないのだった。それは睦夫に対する服従の証しでもあった。
そこまですると、睦夫は良子からアイマスクを外し、良子が見ている前で良子から剥ぎ取ったスカートとショーツの上に放尿する。良子は目の前で自分が帰るのに身に着けざるを得ないものを散々に汚されたところで漸く手錠の鍵を外されるのだった。
良子は完全な敗北を認めざるを得なかった。睦夫に回送電車の件はこれ以上踏み込まないことを約束させられたばかりか、性の奴隷となって何でも睦夫の命令に従いますと誓いまでさせられたのだった。
睦夫が平然と去っていくのを追いかけることも出来ず、睦夫が去った後にトイレの洗面台で汚されたスカートと下着を濯いで生乾きになるまで公衆トイレから出ることも出来なかったのだった。
翌日、生活安全課の自分の席で意気消沈して無言で塞ぎこんでいた良子の元へ段ボール箱が宅配便が届けられる。差出人は「M・I」とあったのですぐに誰からのものは察することが出来た。その場で開けることも憚られ、女子トイレの個室に持ち込んでこっそり開けると中から出てきたのは警察手帳だった。しかしそれは精巧に作られた贋物であることはすぐに判った。
あの日、睦夫が去って行く前に下半身素っ裸の格好で睦夫に向かって警察手帳だけは返して欲しいと土下座をして頼み込んだのだった。持ち物検査の日が迫っていたからだった。返事をしなかった睦夫だったが、返してきたのは本物ではなく一見それらしく見えるイミテーションでしかなかった。良子はそれを使って巧妙に持ち物検査を切り抜けるしかなく、さらにそのことは良子に睦夫には当分、完全服従せねばならないことを示しているのだった。
睦夫の良子を服従させる為の悪だくみはそれだけでは終わらなかった。良子を更に悪い立場に追い込む為の作戦が練られていたのだった。
良子の元へ再び段ボール箱の宅配便が届けられた。今度は中には紺色の女性用の制服と制帽が入っていた。制服は上下のスーツになっていて、一見警察官の制服のようにも見えるが鉄道会社の職員の制服だった。上着とタイトスカートのスーツで、ネームプレートの部分にK電鉄のワッペンは貼られている。制帽もK電鉄の徽章が付けられていた。しかしそれは睦夫が自分の会社から持ち出したO電鉄の女性用制服を、見た目が似ているK電鉄の制服に見えるように改造したものだとは良子はまだ気づいていなかった。電車運行会社の制服は似た物が多く、なかでもK電鉄とO電鉄は一見見分けがつかないほど似ていたのだ。ワッペンさえ付け替えれば本当の職員が近くでよおく見ない限り気づかないようなものだったのだ。
(なんでこんなものを送り付けてきたのだろう・・・。)
当初は良子にもまったく見当が付かなかった。しかし、あとからスマホに送られてきた睦夫からの指示で睦夫の意図は薄々は気づいてきたのだった。
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