山中のレイプ

回送電車の女 第二部




 四十八

 その日はターゲットとなった女性から尿検査と称して車両内で排尿させ尿水を採取して車外に出たところで睦夫からもう仕事は終わりだから帰っていいと言われたのだった。
 当初、段取りと台詞を書いた紙を渡された時にはこんなことが上手くゆく筈がないと思っていた。しかし事前に手渡された制服は警察官の制服そのものだったし渡された警察手帳も初めて見るものではあったがどうみても本物のようだった。
 女を停めさせた公園の中の公衆トイレの中で元の服に着替えた未央はあらためて脱いだ制服をよく見ると胸のところに付いているMPDと書かれたワッペンは貼り付けられたものだった。それをゆっくりと剥がしてみると、下にOER・O電鉄株式会社と刺繍されている社章が出てきた。被っていた制帽のMPDのマークも後から貼り付けられたもので剥がしてみると同じようにOERの文字が出てきて明らかにO電鉄の職員の制服であることが分かる。腕につけられていた腕章もよくみると安物のビニール製で、売られている変装用の贋物に違いなかった。
 (この後、この人を何処へ連れていくんですか?)と訊いた未央の質問には(お前は知らなくていい)と答えてもくれなかった未央はそれ以上関わり合いになるのは罪を増すばかりだと気づいてそれ以上は問いかけなかったのだ。
 (やっぱりあの男はO電鉄の人間だったのだわ。だから私を空の回送電車に乗せることが出来たのだわ。)
 そう気づいたが、今となっては分かってもどうしようもない情報だった。未央が警察などに訴え出たところで男は逮捕されるかもしれないが、自分のほうは悲願だった正式なアナウンサの職がやっと手に入りそうなところでそれを失うことになるのは間違いなかった。だとすればあのビデオや写真の流出を思い留まって貰うことを条件に男の言いなりになっているほうがましだと判断したのだった。

 男は散々優愛の身体を弄んで二度、三度と自分の精液を体内に流し込んだ上でやっと優愛を解放するつもりになったようだった。しかしその解放の仕方は卑劣なもので、後ろ手の手錠は外さずスカートもショーツも奪い取ったままで自分の車で山を降りていってしまったのだった。優愛は裸の股間を隠す術もなく、独りで歩いて里まで山を降りてゆかねばならなかった。里山まで降りたところで段々畑で農作業する年老いた農夫を見つけて恥を忍んであられもない恰好を晒しながら助けを請わねばならなかったのだ。その老人はすでに精力は失っているようで、下半身裸の優愛を見て驚いてはいたが欲情しなかったのが不幸中の幸いだった。老人には手錠を外すことまでは出来なかったので、上着を腰に巻いて貰って警察に保護を要請したのだった。

 第二部 完

未央

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