優愛放尿中

回送電車の女 第三部




 六十九

 ようやく後ろ手の戒めを解かれた未央は、手の甲でまだ口の周りに残っていた精液を拭い取る。すぐ傍で放出したばかりの睦夫が荒い息をしながら寝そべっていた。その隙に未央は机の上に目をやる。乱雑に散らかった机の端に女の顔が見えた。一目で、この間狂言芝居をした相手の女性だと気づく。
 (こ、これ・・・。)
 引っ張り出すと動画から録った静止画を印刷したものらしかった。女は大きく股を開いて簡易トイレの吸い口を股間に押し当てられている。押し当てているのは後ろ姿だが自分なのだとすぐに気づく。
 「おい。何、勝手に観てんだ。」
 睦夫が気づいたらしく、未央を𠮟りつける。
 「こ、これ。あの時の女の人でしょ。」
 「だからどうだってんだ。お前には関係ないことだ。」
 未央は頭の中で、この間の放送の際に聞こえてきた八王子署で保護された女性が強姦されたのを取り下げたという話を思い出していた。
 (きっと、この画像を送り付けて脅したんだわ。)
 「ねえ、もう帰っていいでしょ。あんまり遅くなると親が怪しむわ。」
 「いいだろう。だが、親にはもうマンションには来るなと言い渡しておくんだぞ。また寄らして貰うからな。」
 「わ、わかりました。」
 床に落ちていたショーツとスカートを拾い上げるとそそくさと身に着け睦夫の部屋を後にした未央だった。

未央

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