パンツ覗かせ

回送電車の女 第二部




 三十七

 次に未央が男に呼ばれたのはホテルのロビーだった。ロビーの一角のソファに睦夫がふんぞり返って座っていた。その正面に未央は席を取る。睦夫は前回顔を見せたせいでサングラスもしていなかった。
 「新しい番組は、だいぶ評判がいいみたいじゃないか。」
 男の真意がわからないだけに未央は警戒していた。
 「ええ、おかげさまで。」
 おかげさまというのは皮肉だった。深夜番組の時のようにはしたない格好を晒されたりしていないからだと未央は訴えたかったのだ。
 「そのうち、有名になって顔が割れてくると、こんな場所だって変装しなくちゃならなくなりそうだな。」
 未央は素顔のままで来ていたが、男の言うように局の看板番組で名が売れてくればホテルのロビーであっても素顔を晒しては来れないかもしれないと未央も思うのだった。
 「脚を広げてパンツを見せてみな。」
 「え、何ですって?」
 男の突然の不躾な注文に思わず未央は辺りを見回す。客はそんなに多くはなく、未央たちに注目している者は居なそうだった。
 「もう一回、大きな声で命令しろっていうのかい?」
 「い、いえ・・・。声を荒げないで。」
 未央は仕方なく辺りに注意しながら少しだけスカートの裾を持ち上げ膝頭を開く。
 「だいぶ従順になってきたようだな。」
 「あ、あの・・・。もういいですか? 他のお客が気がついてしまいます。」
 「ふん。いいだろう。じゃ、部屋へ行こうか。」
 「え、部屋って・・・?」
 男は黙ってロビー奥のエレベーターホールの方へ向かって歩いていくので、未央はそれに付いていくしかなかった。

 男はあらかじめ部屋を取ってあったらしかった。先に部屋に入らされると、男は後から入って部屋のドアを閉めると施錠するのが聞こえる。目の前には窓際のソファの前にセミダブルのベッドが広がっている。
 「服を全部脱ぐんだ。」
 部屋へ行くと言われた時から未央は覚悟していた。それまでは口を汚されただけでまだ犯されてはいなかったが、時間の問題だと未央は思っていたのだ。抗うことは無駄だと思った未央は黙って言われたとおりにワンピースを身体から抜き取る。
 ブラジャーに続いてショーツを抜き取ってベッドの上に載せてから男の方を振り返ると、睦夫の手には綿ロープが握られていた。
 (縛られるの・・・?)
 男の口元がにやりと歪むのが未央にもわかった。
 「両手を背中で組んで、こっちに出すんだ。」
 言われたとおりにするしかなかった。手首に睦夫が巻いていくロープが食い込んでいく。両手が背中で括り付けられると余った縄が裸の乳房の上下にも巻かれていく。
 「どうだ。縛られる快感は。あそこが疼いてくるんじゃないか?」
 未央は黙って首を横に振る。
 未央は大学生の頃に最初の恋人が出来たのだが、結局最後まで身体を許すことはなかった。相手も強引には求めてこなかったのだ。しかしその恋人に身体を許す別の女性が近づいているのを未央は気づかなかった。結局、男は身体を許した女の方になびいていってしまったのだった。
 胸元にきつく締めこんでくる縄を見つめながら未央は処女喪失を縛られてされることになる運命を呪わずにはいられなかった。

未央

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