回送電車の女 第一部
七
ガクンと首を振って揺れる電車の中で目を覚ました未央は立ったまま寝込んでいたことに気づく。しかも自分て吊り革に捉まっているのではなく、吊り革に通された手錠に両手首を嵌められて吊るされているのを知って慌てる。
(え、どういうこと、これっ・・・。)
手首を揺り動かしてみるが、手首に嵌まった手錠はびくともしない。
「あっ、きゃっ・・・。」
両手を手錠で吊られているだけではなくブラウスのボタンが外されていて、無理やり上に持ち上げられたブラジャーの下で裸の乳房が剥き出しなのにも気づいたのだ。そればかりかスカートも裾がたくし上げられて腰の部分に挟み込まれているのだ。ショーツが完全に丸見え状態だった。
(嫌っ。こんな恰好のままずっと電車に乗せられていたの・・・。)
未央は窓の外に目を凝らしてみるが、真っ暗な外に時々家の明かりらしきものが通り過ぎていくだけで殆ど何も見えない。
(ここ、どこっ・・・?)
自分が今、何処にいて、今、何時なのかも皆目わからないのだった。一生懸命自分が何をしていたのか思い出そうとしてみる。
(そうだ。テレビ局に行く途中だったんだわ。それがどうして・・・?)
未央にはいつも通りにテレビ局に出社する為に最終電車で新条駅へ向かったことまでしかどうしても思い出せないのだった。
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