電車内昏睡

回送電車の女 第一部




 十三

 睦夫は女が完全に昏睡状態になったのを確認すると改めて女の姿をしげしげと眺める。
 (そうだ。折角だからパンツも剥ぎ取ったところも撮っておくか。)
 女を真正面から撮っているビデオカメラに映らないように女の真後ろにしゃがみ込むと、女の腰骨の辺りでショーツの端を両手で掴んで膝まで一気に引き下ろしてしまう。それから自分の手を濡らさないように慎重に片足ずつ持ち上げて濡れそぼったショーツを抜き取る。もう用済みになってしまったクロロフォルムを湿したハンカチを入れていたジップロックに代わりにお洩らしした小水まみれのショーツを突っ込むと念入りに封を閉じる。女が顔をうな垂れているので首を起こさせて顔がしっかり映るようにしてから女の横を回り込んでビデオカメラのスイッチを切る。
 手錠の鍵を外してぐったりしている女を床に降ろすと、さっき小水を拭き取ってすっかり正面にしっかり沁みが付いてしまっているスカートをノーパンの上に穿かせる。
 (そうだ。あれを忘れるところだった。)
 尻のポケットから女のスマホを取り出すと、起動させて認証画面になったところで女の指を画面に押し当ててロックを解除するのだった。



 女をお姫様だっこの形で電車基地の裏門からこっそりと外に出ると、いつも帰宅時に使っているタクシーを電話で呼ぶ。
 「ああ、いつもの事務所の方じゃなくて裏門のほうに廻って欲しいんだ。そっちで待ってるから。」
 終電を回送してから帰るのでいつもタクシーを使うことが許されているのだった。しかし請求がいつもとは違う額にならないように気をつけなければ経理に見つかってしまう惧れがあった。
 「運転手さん。ちょっと後輩が酔い潰れちゃって送ってかなくちゃならないんで隣の駅の南口の方に公園があるんだけど分かるかな。その近くまで行ってくれればいいから。あ、大丈夫、大丈夫。こいつ、さっき吐いちゃったからもう戻す心配はないから。スカートも汚れちゃってるけど前の方だけだからシートを汚す心配もないから。」
 いつもの運転手は、睦夫がだっこしている若い女がスカートに沁みを作っているので、ちょっと嫌そうな顔をしたのだが常連の客なので断れなかったようだ。運転手には泥酔して寝込んでしまったように見えたようだった。
 睦夫は運転手が開けてくれた後部座席のドアに女を抱きかかえたまま背中から滑り込むように乗り込むと女を横に寝かせる。運転手はその様子を心配そうにバックミラーで見守っている。睦夫は女がノーパンなのがばれないように両脚を開かないように慎重に横たえると、運転手に出発するように合図する。

未央

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