電車運転士と良子

回送電車の女 第三部




 七十八

 回送電車はいつものようにK電鉄の沿線の駅を次々に越えていく。その度に全裸の睦夫は自分の裸がホームに晒されてしまうのをどうすることも出来ない。
 電車はやがて私立女子高のすぐ近くの駅に入っていこうとしていた。あらかじめ示し合わせておいた未央からの電話が良子の元に掛かって来る。
 「あ、はい。・・・。ええ、そうです。・・・。はいっ、わかりました。運転手にそう伝えます。」
 「あ、水島さん。何かあったんですか?」
 「ええ。警察署からの緊急連絡で爆破予告があったようなんです。今、所轄の警察が線路を調べているようなので、次の駅で一旦停まって連絡を待ってくれませんか。運行センターの方にもその旨、連絡しておいてください。」

 電車が減速を始める。その駅には始発で女子高へ通う女子生徒が既に集まり始めていた。そのうちの一人が「きゃっ。」と悲鳴のような声を挙げる。その声に次々と女子高生たちがやってきて突然停まった回送電車の中の異変に気付いて騒ぎ始める。

未央

  次へ   先頭へ



ページのトップへ戻る