回送電車の女 第一部
十六
「え、これですか、今日の衣装?」
未央はスタイリストの子から渡されたあまりに短いミニスカートを受け取って狼狽える。未央が出る番組ではいつもミニスカートを穿かされていた。その中でもその日の衣装は飛びぬけて短いものだった。
「大丈夫よ。プロデューサーがうまくカメラワークを切り替えるって言ってたから。」
「で、でも・・・。」
「なんか飯島プロデューサー、このところ数字が落ちてきてるんで焦ってるみたい。」
「そ、そうなんですか?」
未央は前日ドタキャンで番組をすっぽかしているだけあって何か言える立場ではなかった。
「こんな短いので大丈夫でしょうか、プロデューサー?」
飯田の前に出た未央は心配でもう一度確認してみる。
「ああ、いいよ。お色気たっぷりで。心配ならちょっとしゃがんでみて?」
「え、こうですか?」
「ああ、そのぐらいなら大丈夫。危なくなったらさっとカメラ切り替えるから。じゃ、本番ね。」
プロデューサーに言われて仕方なく本番のスタジオに向かう未央だった。その未央の後ろ姿を見送りながら飯田は数字をもう少し上向かせるにはちょっとぐらいパンチラシーンを混ぜてもいいんじゃないかと思いながらコントロール室に向かう。
本番のスタジオではディレクターの磯部君が待ち構えている。
「あ、未央ちゃん。昨日ドタキャンしたこと、最初にちょっと謝っておいて。ああ、体調不良でってことにしてあるから。」
「そ、そうですか。わかりました。」
「じゃ、本番。行くよ~。3、2、1、キュー。」
「こんばんわ。最初に昨日は番組休んじゃって済みませんでした。体調の方はもう大丈夫なので今日からまた頑張りまーす。よろしくぅ。」
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