回送電車の女 第三部
七十六
「ど、どうぞ・・・。」
未央が並々と注ぐワインを睦夫はあっと言う間に空にする。そしてそのワインに仕込まれた薬で眠り込んだのはそのすぐ後だった。隣の部屋に隠れていた良子が睦夫のポケットからアパートの鍵を取り出すと、睦夫の両手に厳重に手錠を掛け身動き出来ないようにガムテープで手足をぐるぐる巻きにしてしまう。
「さ、準備出来たから睦夫のアパートに行くわよ。」
良子と未央は睦夫をマンションに監禁したままタクシーで睦夫のアパートに向かうのだった。
睦夫のアパートからは未央の恥ずかしい動画や写真などが多数押収される。良子も自分自身が撮られた画像を回収してゆき、一緒に八王子で強姦された若妻、優愛の動画も回収される。更には睦夫がこっそり作っていたK電鉄の車両の合鍵も押収されたのだった。
マンションに戻った二人は、ぐるぐる巻きにした睦夫を丈夫な麻の大袋に詰め台車に積んで呼んであったタクシーまで運んで運転手に手伝って貰ってK電鉄の電車基地まで運ばせる。
「重たいですねえ。何が入っているんですか、これ? 」
タクシー運転手の質問に良子が答える。
「電車の事故の際のシミュレーションに使う人体模型なんですよ。人体に与える被害を測定する為に人間と同じ重さで作ってあるんです。」
良子の説明に(なるほど)と運転手も怪しまずに頷く。
再び台車に乗せて二人が運び込んだのは電車基地に止めてある朝一番で回送する予定の回送電車の中だった。その電車の中には睦夫が作った合鍵で忍び込んだのだった。二人掛かりで睦夫の両手に手錠を掛け、吊り革に万歳の格好で吊るしてしまう。睦夫が目を覚まさないうちにズボンとトランクスも奪い取ってしまう。
「こいつをただ晒しただけじゃ、腹の虫が治まらないわ。」
「大丈夫。いいものを持ってきたから。未央さん。これをこいつの男性自身に塗っておくのよ。」
良子が手渡したのは、ヨードチンキと呼ばれる真っ赤な消毒薬だった。
「ちょっと沁みるから気付け薬にはちょうどいいわ。」
未央は渡されたヨードチンキをぐったりして眠り込んでいる睦夫の局所部分に塗りこめていくのだった。
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