回送電車の女 第三部
六十五
次の日、天気予報のコーナー前にキャスター二人による報道のニュース解説が行われていて未央は次の予報の資料を確認しながら何となくその報道解説を聞いていた。
「先日報道した八王子の山中で保護された女性の続報ですが、その後被害を取り下げたそうですね。」
「ええ、そうなんです。警察官の格好をした男女二人組に騙されて車に乗せられ強姦されて車から放り出されたと報道陣に証言していたそうなんですが、突如取り下げたと言ってますね。」
(え? 警察官の格好をした男女二人組・・・?)
未央はすぐ睦夫に命じられて演じた狂言演技を思い出す。
(まさか私達のことでは・・・。)
「その強姦被害を取り下げた女性の心境って、どういう事なんでしょうか?」
「これは想像でしかないのですが、警察側からの圧力があったという可能性もありますね。何せ警察当局にとっては不祥事のようなものですから。」
「はあ、なるほど。」
「えーっと次のニュースですが、連日ネット上で騒がれている回送電車に乗る全裸女性の件ですが、また情報が増えたようですね。」
「ええ、今度はK電鉄で真昼間に現れたという目撃情報が多数挙がっていますね。偶々撮影された画像もあるようなんですが、何せ通過する回送電車ですからはっきり撮れているものは殆ど無いようです。」
「以前は深夜だったのが、昼間にもというのはどういうことなんでしょうか?」
「ネット上で炎上していることから、これを真似た模倣犯というのも考えられますね。前回のがО電鉄でしたから、あちこちの路線で同じ犯人の仕業というのは考えにくいですからね。また騒ぎのなっているのを面白がって画像も合成ではないかという説も挙がっているようですね。」
(真昼間って・・・。私の時じゃないんだわ。)
立て続けに自分にも関係していそうなニュースの報道が続いて、未央は天気予報の資料が頭に入ってこない。
「未央ちゃーん。もうすぐ天気コーナー、本番です。スタンバイ、お願いしまーす。」
「あ、はいっ。」
未央は資料をテーブルに置くと、お天気コーナーのブースに急ぐのだった。
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