妄想小説
田舎教師
六十九
アパートに帰りついた早苗はドアのロックを何度も確認すると、奥に入ってスカートを下ろす。腰に巻かれたぴったりしたベルトからは二本の革ひものようなものが股間を跨ぐようにして前後に留められているのが分った。
(こんな物を嵌められていたのだ・・・。)
初めてはっきりみるその奇妙な物は初めて眼にする物だった。昔、中世の西洋で使われていたという貞操帯というのを短大時代に見聞きしたことがあったが、それとも違うようだった。貞操帯は性行為が出来ないように性器の部分を蔽うように出来ていた筈だが、早苗が装着されたそれは、性器自体は剥き出しになるようになっていたからだ。
とにかく早く外してしまおうと、バックルのような部分を捜すがベルトの前部分にはそれらしいものがない。早苗は姿見の前に立って背中側を映してみて、はっとする。背中側でベルトの先が何やら金属で出来た金具の中に挿し込まれていて、その中心部分には鍵穴のようなものが付いているのだった。
(もしかして、これは・・・。)
鍵が無いと外せないことを知って、早苗は絶望的になる。その時、再び落合教諭が言った謎の言葉が早苗の脳裏に蘇ってきた。
(貴方は教頭に調教されているのですよ。)
確かに落合はそう言ったのだと早苗はまざまざと思い出す。
(『調教』って・・・。)
あまり聞き慣れない言葉が、何かとセットで使われることがあったような気がしてくる。そして次に思い出したのが稲葉教務主任が何気なく洩らした言葉だった。
(『痴漢に遭いたいだなんて変態とか淫乱でいうのよ、そういうの。』 そうだ。変態だ。変態、調教・・・。マゾ女への調教。確かそんな言い方を聞いたことがある。落合先生はそういう意味で言ったのだろうか・・・?)
その夜は悶々としてなかなか寝付けない早苗なのだった。

コンコン。
「あの、小俣早苗です。」
「ああ、入りたまえ。」
翌日は朝一番に授業が無かったので、早々に教頭室を訪れた早苗だった。一刻も早く腰回りの拘束具を外して欲しかったからだ。
「どうかね。少しは慣れたかな。」
「ええ、教頭先生。もうすっかり平気になりました。」
本当はそんな事は無かったのだが、そう言わないとずっと外して貰えない気がしたからだ。
「もう外してくださいますか?」
「いいだろう。しかしその前に目隠しを着けて、両手はもう一度縛る必要がある。」
(どうしてですか?)と言いたいのをぐっと堪えて素直に頷いて、ビロードの帯を受け取ると自分で眼に当ててから、教頭に背を向けて両手を後ろで交差させる。
教頭の手が自分の手首を取って縄を巻き付けていくのを、早苗はもう何時もの事のように感じ始めていた。しかし頭の中ではずっと『調教』という言葉が渦巻いているのだった。
「うっ。」
両手を縛った後、縄が胸の周りに回され絞り上げられると早苗はつい呻き声を発してしまう。いつもよりは強い縛り方に感じたのだった。
「どうした。何か感じるのかね?」
「え、いえっ・・・。もう縛られても身体は反応しなくなったと思います。」
「本当にそうかね?」
教頭の手が自分のスカートのホックに掛かったのが感じられる。その次の瞬間にそれはストンと床まで落ちていった。裸の股間にすうっと風が当たるのを感じる。縛られている両手が上の方へ持ち上げられる。教頭が背中側の鍵穴を探っているのだと判った早苗は、自分から手助けするように、両手を交差したまま上へ持ち上げる。
背中で何らかの金属がかちあうような音がしたかと思うと、カチリと音がしてすうっと腰の締め付けが緩くなる。
(はあっ。やっと外して貰えた・・・。)
安堵の息を吐く間もなく、教頭の手が後ろから早苗の胸に伸びてきた。

次へ 先頭へ