教師被縛

妄想小説


田舎教師



 五十二

 「も、もうこれ以上は無理です。お許しください。縄を解いてくださいっ。」
 教頭は早苗が音を挙げたのを見て、早苗の目の前の雑誌を閉じると机の上に戻し、ゆっくりと早苗の背後に廻ると縛っていた縄を解き始める。
 縄が徐々に緩んでくるに従って、自分の息が荒くなっていたことに気づく。
 (落ち着こう。落ち着かなければ・・・。)
 そう思うのだが、興奮はなかなか収まってこないのだった。

 「少しは落ち着いてきたかね。」
 教頭から水を貰って一口、口に含むとやっと落ちついて平静を取り戻した気がした。
 「縄というものは不思議な魔力を持っているのだ。最初縛られた時は何度も感じなかった筈だ。しかし、あの雑誌の縛られてた女性の表情とかを見ていると性的な興奮を覚えた筈だ。それも相当激しい興奮だ。君もそれを認めるね。」
 「あ、はいっ・・・。でも・・・。」
 「そう。いつでも同じ様に興奮を憶えるという訳ではない。縄自体には本当は力は無い。それをどう思うか、どう感じるかによって変わるのだ。君も最初の時と、最後の方では縛られるという事の感覚が全然違ってきていた筈だ。」
 「ああ、そんな気がします。」
 「男子生徒だが、大人がああしたものを禁断の書として隠してこそこそ見るからきっと興奮するものだと思い込んでしまうのだ。しかしああした経験があまりない若者は縛ったり縛られたりして本来はそんなに興奮するものではない。そう思わされているだけなのだ。あのグラビア雑誌のモデルにしたって恍惚感に浸っているような表情をしているが、あれは実は演技なのだ。」
 「え? そうなのですか・・・。」
 「そうなのだよ。それで縛ると女は感じるのだと勘違いしてしまうのだ。だから未経験のああいう生徒等にはああした書物は有害なのだよ。」
 「そうなのですか・・・。では、どうすれば?」
 「もう観てしまったのだから仕方ない。縛れば感じると思い込んでしまっている。いびつな性欲というものだ。それは矯正しなければならない。」
 「矯正する・・・? そんなことが出来るのですか?」
 「ああ、そうだ。君なら出来るだろう。あの生徒をこっそり呼びつけて君があの生徒に縛らせてあげるのだ。そうして君も何も感じないし、生徒自身も女の先生を縛ったからといってとくに興奮もしないのだということを判らせてあげるのだ。」
 「そ、そんな事・・・。可能でしょうか?」
 「ああ、君ならやれる。自信を持ちたまえ。」

小俣早苗

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る