妄想小説
田舎教師
十一
「あ、あの・・・。教頭先生。小俣です。小俣・・・、早苗です。」
教頭室の扉を軽くノックした後、消え入りそうなか細い声でそう言ってから返事を待つ早苗だった。
「入りなさい、小俣君。」
一瞬、間を置いて教頭から返事がある。
「失礼します。」
部屋に入るなり、首を項垂れている早苗だった。
「何故、呼ばれてか判っているよね。」
「は、はい・・・。」
「稲葉君から聞いたが、授業を途中で放棄して教室を飛び出したそうだね。」
「も、申し訳ありませんでした。」
「何があったのかね。言ってみたまえ。」
「そ、それが・・・。」
「どうした。言えんのか。」
「・・・。」
「どうせ、パンチラ教師とか生徒にからかわれたんだろう。」
「ど、どうして、それをご存知なのですか。」
「ふん。長年、教師をやってるとね。だいたい想像がつくもんだ。この時期は生徒ってのは新しい先生には何かにつけ、アダ名を付けたがるもんだからね。」
「何時の間にか、これを背中に貼られていたんです。」
そう言って早苗はおそるおそる丸めていた紙を教頭に差し出す。受け取った教頭はその紙を広げて書いてある文字を確認する。
「だからと言って、生徒を責める訳にはゆかんな。元はと言えば君の失態が原因なのだからね。」
「それは判っています。判っていますが、どんな顔をして授業を続ければいいのか・・・。もう頭の中がパニックになってしまって・・・。」
「情けないことを言うんじゃない。何を言われても毅然として構えて授業を淡々とやればいいのだよ。」
「で、でも・・・。」
「君が困ったような顔をしていると、生徒等は余計に面白がって言い続けるだろうからね。下手すればずっとパンチラ先生って呼ばれ続けることになる。」
「そんな・・・。どうしたらいいでしょうか、教頭先生。」
「君には隙があり過ぎるのだよ。それをまずは直さねば。私が教育をしてあげよう。まずは当面、ミニスカートは控えることだ。そして・・・だ。いいかね。当分の間、放課後私の部屋に必ず出頭しなさい。その時にだ。君が持っている一番短いスカートを持参しなさい。穿いてくるのじゃないよ。余計に生徒を刺激しかねないからね。持って私の部屋に来るんだ。いいね。」
「わ、わかりました。何でも教頭先生の仰るとおりに致します。」
教頭室を辞すると、その日は偶々古文の授業の枠はなかったので職員室に籠って翌日からの授業の準備を続けた早苗だった。
次へ 先頭へ