教壇初立ち

妄想小説


田舎教師



 十

 「先生、今日はミニスカじゃないのかよ?」
 「え? どうして? 何時もおんなじ服じゃないわよ。ミニスカートも時々は穿くけど・・・。」
 途端にまたクスクス笑いがあちこちから起こる。
 「なあに? いやねえ。じゃ、出欠をまず取りますね。」
 出勤簿の名前を上から読み上げようとした早苗は突然背中をポンと叩かれる。
 「先生、終わったよ。」
 さきほど、黒板拭きを申し出た男子生徒だった。
 「ああ、ありがとう。じゃ、席に戻ってね。えーっと、じゃ出欠を取りますので返事をしてね。秋山君。」
 「はいっ。」
 「浅川さん。」
 「はあい。」
 生徒一人ひとりの名前と顔を確認しながら名前を次々に読み上げていく。
 「じゃ、さいごは渡辺さん?」
 「はい。」
 「全員、出席ね。それじゃ授業を始めます。みんな、教科書の18頁を開いて。今日は万葉集から始めます。えーっと、最初の一句です。」
 そう言って、教科書に載っている万葉集の中から最初の句を黒板にすらすらと書いていく。しかしその途端に教室内は爆笑の渦になってどよめきとざわめきが収まらなくなったのだ。
 「どうしたの、みんな。何をそんなに騒いでいるの。」

パンチラ先生

 訳がわからずにポカンとしている早苗に向かって、一人の女子生徒が立ちあがって、早苗に走り寄ってきた。
 「先生、これよっ。」
 そう言って、女子生徒は早苗の背中からベリッと一枚の紙切れを剥して手渡す。受け取った早苗はそこに書かれている文字を見て、血の気が失せたのだった。
 (パンチラ先生)
 その紙にはそう書かれていて、何も知らずにそれを背中に貼られていたことにやっと気づいたのだった。

小俣早苗

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