妄想小説
田舎教師
四十
落合茂吉というその男のことは、早苗も最初に赴任した日に気づいていた。職員室の隅の方の席で何とも陰気な雰囲気を醸していたという印象だったが、その彼一人のみが独身だと聞いて残念というよりも、何か不吉なものを感じた早苗だった。
コンコン。
「教頭先生、小俣です。」
その日も放課後になって早苗は特別教室の一番奥にある教頭室へ出向いたのだった。
「入りたまえ、小俣君。」
「失礼します。」
教頭室に入ると入口の扉をしっかりと閉める。その時、扉には内側から掛けるドア錠が付いているのに気づく。早苗はその錠を掛けて置いたほうがよいのか一瞬迷う。男性と施錠された部屋の中に二人きりになることより、教頭からこれから受けることになる事を他の人に見られたくないという気持ちの方が強かった。しかし教頭室が特別教室の一番奥にあって誰かが近づけば足音で判ると思ってそのままにして教頭の方に向きなおった早苗だった。
「あの・・・、今日はどうしたらいいでしょうか。」
「どうしたら? 君が何かして欲しくて来たのじゃないのかね?」
「ああ、そう・・・でした。あ、あの・・・、今日も痴漢に遭っても動じないように私を訓練していただけないでしょうか。」
「そうか。いいだろう。君が痴漢に遭って、どうされたかを正確に話してみたまえ。」
「ええ・・・。胸のボタンを外されてブラジャーを引き下ろされました。そしてスカートの裾を持ち上げられてショーツに手を伸ばされました。」
「自分でその時のように胸を開いてみなさい。」
「はい、わかりました。」
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