理科室強姦

妄想小説


田舎教師



 五十八

 (ああ、このまま生徒達に犯されてしまうの・・・。ああ、どうして?)
 縛られて自由にならない手を何とか振り解こうとする。するとその手がすっと動いたのだ。
 (あれっ? あ、縄が・・・。)
 急に縄が解けたと思って手首をみると、そこには縄がない。
 (えっ? あっ。ゆ、夢・・・?)
 ふと気づくと早苗は自分のベッドの中に居るのだった。
 (なんて淫らな夢を自分は見たのだろう・・・。)
 生徒達に犯されそうになった夢をみたことが、早苗自身を狼狽えさせるのだった。

 翌朝、早目に教頭から借りた生徒指導室の鍵と縄の束を返しておこうと、特殊教室のある棟へ急いでいた早苗は向こうから見覚えのある風采の男が近づいてくるのを認める。

渡り廊下擦れ違い

 「あ、落合・・・先生でしたよね。」
 「やあ、小俣先生。こんなに朝早くどうしました。あれっ、また教頭室ですか?」
 「え、ああ、まあそうです。」
 「ご苦労さまです。では。」
 そう言って擦違っていく落合教諭を、早苗はちょっと立ち止まって見送る。
 (今、確か『また教頭室ですか』って言った・・・。『また』ってどういう意味だろう・・・。)
 落合教諭は早苗が何度も教頭室を訪れているのを知っているかのような口振りだったのだ。

 「失礼します、教頭先生。お借りした生徒指導室の鍵を返しにきました。」
 縄のほうはわざと触れずに物だけ鍵と一緒に机の上に差し出す。
 「ああ、それでどうだったね。あの生徒は・・・。」
 「ええ、教頭が仰ったように言い諭しておきました。ただ・・・。」
 「ただ・・・? どうも浮かない顔のようだね。全てがうまく行ったんじゃなかったのかね。」
 「ええ。あの渡部っていう生徒は分ってくれたようなんですが・・・。あの、教頭先生。本当に大丈夫なんでしょうか。」
 「大丈夫とは?」
 「それが・・・。実は今朝の明け方、変な夢を見てしまって。不安なのです。」
 「不安? いったい、どんな夢を見たというのだね。」
 「それが・・・。生徒が実は私を縛ってみてとても興奮したって言い出す夢なんです。そういう事って、本当に無いのでしょうか?」
 「ふうむ。君がそういう夢を見たというのだね。・・・。それは、もしかすると君の方に問題があるのかもしれんな。」
 「え? 私にですか・・・。」
 「君は確か幼児期の経験で男性恐怖症になったと言ってたよね。それに、君は小さいときから父親なしで育って、男性というものに極端に免疫がない。」
 「え、ええ。そうかもしれません。」
 「縛られるっていうのは、ある種の女性にはそれが快感に感じられるというのは実際にあるんだよ。ま、極普通の人にだって、多少はそういう傾向がみられなくもない。しかし君の場合、男性恐怖症と相まって、すこしそういう傾向が普通より強いのかもしれないね。」
 「え、わたし・・・。普通ではないのでしょうか?」
 「そういう可能性もある・・・ということだ。もしかして君。昨日、生徒指導室でその生徒に縛られている時に、何か妙な感覚に捉われたんではないかね。」
 「そ、それは・・・。あの・・・。」
 「やはりそうなんだね。身体の中で何かが疼くような感覚を感じたんだろう。」
 教頭にずばり言い当てられて早苗は顔が真っ赤になり、思わず顔を両手で蔽ってしまう。
 「わ、わたし、あの・・・。」
 「いいんだ。落ち付きたまえ。そんなに狼狽えることではない。そういうのは時としてあるものなのだよ。特に君みたいに幼い時に特殊な経験をして育った場合は。」
 「わたし、どうしたらいいのでしょう。」
 早苗は思わず悲観に呉れて項垂れてしまう。
 「大丈夫だよ。それも矯正次第ではなんとでもなる。」
 「矯正・・・ですか。」
 「ああ、そうだ。君のように教職員は生徒の前でそんな素振りを見せてはならない。まだ経験の薄い若者に妙な感覚を発達させてしまう危険があるからね。若い女の子の場合は、変な願望や妄想を抱きかねない。若い男の子の方は、女性がそういう感情を持つことを知ると余計に嗜虐的になる可能性もある。だから、そういう感情は訓練で外に出ないようにする必要があるのだ。」
 「ああ、教頭先生。何とかしてください。私をまた訓練して、指導してください。」
 「まあまあ、そんなに焦ることはない。君、今朝は一時間目は授業がなかったよね。ちょうどここに縄がある。少し訓練をしてみようか。」
 「あの、是非お願いします。」
 「それじゃ、両手を背中の方に出して交差するのだ。じゃ、縛るよ。いいね?」
 「あ、はいっ。お願いします。」
 「そうだ。目隠しもしておこう。自分の感情に素直になりやすいようにね。」
 教頭は早苗を再び縄で縛り上げると、目隠しも取り出して早苗の視界を奪ってしまうのだった。

小俣早苗

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