妄想小説
田舎教師
五十
「これは何なの? どこからこんなものを入手したの、答えなさい。」
「それは、そのう・・・。この間、部活のOBの先輩が部室に持ってきたんです。回し読みしていいって・・・。」
「授業中にこっそり観ていたっていうのもアレだけど、こんなの、赦すわけにはいかないわ。これは返す訳にはゆかない。どう処分するかは、校長や教頭と相談します。いいわね。」
叱られていた生徒は首を項垂れて頷くのだった。
「小俣先生。何をそんなに生徒を叱っていたの?」
「あ、見てたんですか? 生徒が授業中に教科書とは関係ないものを回し読みしていたので、取り上げたんです。」
「ふうん、そうだったの。で、どうするの。その取り上げたもの?」
「それが、処分に困っているんです。あまりいろんな人に見せたくないものなので・・・。」
「そうなの。そういうのは教頭に相談するのがいいわよ。」
「そう・・・ですよね。私もそうするしかないと思ってました。ありがとうございます、稲葉先生。」
早苗は稲葉教諭の助言を得て、エロ雑誌を茶封筒に見えないようにしまうと、教頭室に向かうことにしたのだった。
「あの、これなんですけど・・・。」
早苗は教頭室で茶封筒に入れたエロ雑誌を手渡す。
「見せてみたまえ。ふうむ。なるほどな。」
「どのように対処したらよろしいでしょうか?」
「君は、この雑誌を見たのかね?」
「あ、はい。少しだけですが・・・。」
「で、どう思ったのだ?」
「あの・・・。女性の自由を奪って辱めるなど不健全で、若い人が見るようなものではないと思いました。」
「では、何故男子生徒はそんなのを見ていたんだと思うかね?」
「若い頃は何にでも興味を持つもので、見たことがない世界を覗きたかったのではないでしょうか。」
「君は意外と生徒たちのことが判っていないようだ。相手の立場に立って物を考えるという事が出来ていない。縛った女、縛られた女にどういう意味があるか判らんようだな。そうだ。生徒がこれを見た気持ちを理解する為に、君も一度縛られてみるといい。」
「え? 私が・・・。縛られるのですか?」
「そうだ。生徒の気持ちを理解するには、自分が縛られてどう感じるかをまず知らねばならんのだ。」
「でも、どうやって・・・。」
「私が君を縛ってみてあげよう。どうだね。嫌かね?」
「い、いえ・・・。生徒の気持ちを理解する為でしたら、やってみます。教頭、お願いします。」
「そうか。わかった。偶々だが、ここに縄がある。縛ってあげるから後ろを向いて両手を背中の方に廻すのだ。」
「こ、こう・・・でしょうか?」
「そう、それでいい。じゃ、縛るからどんな気持ちになるか、よおく感じておくのだ。」
「は、はいっ。」
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