体育館呼出し

妄想小説


田舎教師



 五十六

 「ねえ、こんな所で話があるって何なの?」
 男子生徒が早苗を連れてきたのは体育館だった。男子生徒は辺りを見回している。
 「先生。誰にも聞かれたくない話なんだ。あそこの用具室の中でもいい?」
 「え? ああ、いいわよ。」
 男子生徒と二人だけで体育用具室に入るのは少し躊躇われたが、相手はまだ子供なのだと思うことにする。
 「先生。扉、閉めておいて。」
 早苗は鍵を掛ける訳ではないのだからと、生徒に言われた通り用具室の扉を閉める。
 「さ、閉めたわよ。誰にも聞かれないと思うから、話して。何が相談したいの?」
 「あのさ・・・。実は俺もあの雑誌、見たんだ。」
 (俺も・・・?)
 そう聞いて、早苗はすぐに渡部から取り上げたエロ雑誌のことだと気づく。
 「あの写真、見てからあの光景が頭に焼きついて離れなくなっちゃったんだ。」
 「そ、それで・・・?」
 (私たちだけの内緒だって言ったのに。もしかして話したのだろうか・・・?)
 「女の人って、縛られると興奮するものなの? 恍惚となるって本当なの?」
 「あの写真は芝居なのよ。演技よ。女の人は縛られると興奮するなんて、嘘よ。」
 「そうなの、先生。先生はそんな事、ないの?」
 「そうよ。私は縛られたからって興奮なんてしないわ。」
 「試してみていい? 先生が興奮するかもあるけど、自分がどうなのかって。女の人を縛るって、どきどきするような気もするし、興奮するのかって・・・。」
 「する訳ないじゃないの。あんなの作り話よ。」
 「じゃ、試していい? ここに縄があるんだ。」
 (きっと渡部君から聞いたのね。しょうがないわねえ。)
 「ちょっとだけよ。縛ってみて、何も感じないって確かめられたらそれでおしまいよ?」
 「ああ、先生。俺、それを確かめないと夜も眠れそうもないんだ。」
 「しょうがない人ね。あ、その縄ね。いいわよ。縛って見て。」
 早苗は渡部にしたように背中を向けて両手を後ろで交差する。男子生徒がその姿を見て、生唾を呑みこむのを感じた。
 「先生・・・。本当にいい?」
 心なしか生徒の声が震えている気がした。縄を床から持ち上げる動作もぎこちない。
 (まだ子供なのね。)
 「いいわよ、縛って。」
 その言葉を待っていたかのように男子生徒は飛び付いてきた。手首に縄が巻かれる。
 「あまり痛くしないでね。」
 男子生徒は縛るのに必死で、声が聞こえていない風だった。縄が胸にも回される。
 「うっ・・・。ちょっと痛いわ。もう少し優しく縛って頂戴。」
 「駄目だよ、先生。緩くじゃ解けちゃうもの。それにきつく縛らないと感じないよ。」
 「えっ?」
 男子生徒の語調がはっきり変わったのを早苗は聞き間違えたのかと耳を疑う。
 「もういいでしょ。女を縛ったからって、何も感じないでしょ?」
 「ううん。凄く感じてる。凄い興奮する・・・。」
 「え、何を言ってるの? もう解いてっ。」
 「駄目だよ、先生。本当に感じないか確かめるまでは。ほら、僕のここ。こんなになっちゃってるでしょ。」
 縛り終えたのか、男子生徒が早苗の前に回り込む。その下半身はズボンの中心が明らかに膨らんできているのが判る。
 「さ、そこに座って。」
 男子生徒は早苗の肩を押して無理やり体育倉庫室のマットの上に早苗をしゃがませる。
 「ね、お願い。もう解いて。」
 しかし男子生徒はその声を無視するかのように、縄を緩める代わりに早苗のブラウスのボタンを外し始めたのだった。
 「な、何するの。やめてっ。声挙げるわよ。」
 早苗は生徒を威嚇したつもりだった。しかしその声は生徒を逆上させたようだった。ボタンを外したブラウスを乱暴に左右に引いて胸元を肌蹴させると、覗いてしまっているブラジャーを引き下げて裸の乳房を露わにさせてしまう。
 「こんな格好で誰かを呼ぶの? 皆んなに見られていいの?」

小俣早苗

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