股間濡らし

妄想小説


田舎教師



 四十二

 「ちょっと触られただけで、こんなになってしまうとは。そんなんじゃ、痴漢の思うツボだぞ。ますます付け込んでくるし、君もしまいにはどうにかなってしまいそうだぞ。」
 「ああ、わたしはどうしたらいいのでしょうか?」
 「触られているところに意識が集中し過ぎているのだ。何か他のことを考えなさい。意識を別のものに持っていくのだ。」
 「意識を別に・・・?」
 「般若心境を唱えるとか。うん。知らんか、般若心境は。そうだ。君は古文の教師だったね。何か和歌でも思い出して念じればいい。」
 「わ、和歌・・・ですか。」
 「いいね。もう一度触るよ。そしたら触られているところから意識を外して必死で和歌を念じるのだ。いいね?」
 「わ、わかりました。お願いします。」
 教頭の指が再び早苗の乳首をつまみ、陰唇をショーツの上からなぞり上げる。
 「あ、・・・。え、えーっと。」
 (何か、和歌を思い出さなくちゃ・・・。えーっと、えーっと・・・。し、しのぶれど。えーっと、なんだっけ。そうだ、しのぶれど色に出にけりわが恋は。その次は・・・。そうだ、しのぶれど色に出にけりわが恋はものや思うとひとの問うまで。えーっと、どんな意味だったっけ。耐え忍んでいるけど感じているのが顔に出てしまって。あそこを触られて感じているのだと痴漢に言われてしまう・・・。え、そんな意味? ち、違うわ。えーっと、・・・。)
 「うん、そうだ。その調子だ。触られていることから意識が離れたようだね。そういう風にまず触られたら、別のことを考えるのだ。そうすれば平気でいられる。」
 「そ、そうでしょうか。でも、少し判った気がします。もう少しお願いします。」
 「ではもう一度やってみよう。」
 「あっ、ああ・・・。」
 (えーっと、あし・・・、あしびきの・・・。えーっと、その次は何だっけ。そうだ。あしびきの山鳥の尾の、しだり尾の、ながながし夜をひとりかも寝む。長い夜をひとりで寝る。これってオナニーをしてるっていう歌じゃなかったかしら。何か違う歌を思い出さなければ。えーっと、みちのくの・・・。えーっと、みちのくの、忍ぶもじずり誰ゆえに・・・、乱れそめにしわれならなくに。えーっと、忍ぶもじずり・・・、何だっけ。もじずりって。もじずり? せんずり。これもオナニーだったかしら。我を忘れてしまうほど乱れてしまうの? オナニーで悶えて・・・? え? そんな歌だったかしら。)
 「ふうむ。何を考えているのか知らんが、身体が反応しなくなったようだ。こつが掴めてきたようだな。」
 「そ、そうですか。私、反応・・・してなかったですか?」
 「ああ、最初の頃よりはな。今日はこの位にしておこう。君、オナニーをしたことは?」
 「え? オナニーって、あの自慰のことですか?」
 「他に何があるっていうんだ。ん? どうなんだ。正直に言いたまえ。」
 「あ、あの・・・。一度だけ・・・。」
 「一度? 何時だね。」
 「は、はいっ。短大で一度だけ合コンしたことがあって、その時男の人から電話番号を訊かれたんです。それで掛かってくるとずっと待っていたんですけど、全然掛かって来なくて。それであまりに寂しくなってつい・・・。」
 「男に振られて淋しくなってつい自分で自分を慰めたというのか。」
 「は、はい・・・。」
 「しようの無い奴だな。でも、まあいい。オナニーの仕方を知っているのなら。夜にでもオナニーをしながら自分で練習するのだ。身体が感じて来たらすぐに他の事を考えるのだ。そうして意識を他の方へ持って行く練習をするのだ。わかったね?」
 「や、やってみます。ありがとう、ございました。」
 深々と教頭のお辞儀をすると、ブラジャーを着けるのも忘れて肌蹴た胸元を掻き寄せるようにして教頭室を辞した早苗だった。

 その翌日も早苗は放課後、教頭室を訪れる。
 「教頭先生。わたし、自分で特訓してきました。先生の言われる通りでした。オナニーをしていて、感じそうになったらすぐに古今和歌集の文句を唱えるようにしたんです。そしたら、すうっと性欲が失せて何も感じなくなったんです。私、多分痴漢の攻撃を克服出来たと思います。」
 「ならば確かめてみるかね。」
 「はいっ。是非、お願いします。」
 早苗は渡されたビロードの目隠しですぐに目を蔽う。一旦、深呼吸してから背後に居るらしい教頭に向かって言う。
 「教頭先生、お願いします。」
 「いいんだね? じゃ、いくよ。」
 教頭の手がするすると早苗の尻に向かって伸びていく。

小俣早苗

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