指導室呼出し

妄想小説


田舎教師



 五十三

 教頭の指示に従って、早苗の古文授業でエロ雑誌を見ていた男子生徒の説諭は教頭室のある棟の反対側にある生徒指導室で行われることになった。生徒等のプライバシーを守るという名目で廊下側には立ち聞きを防ぐ控え室が設けられ、その奥の生徒指導室には中から鍵が掛かるようになっている。早苗は教頭からその鍵を預かって生徒を待ち受けた。
 「渡部君ね。さ、入りなさい。」
 控え室入口に現われた問題生徒の渡部稔を確認すると、早苗は奥の指導室の方へ招じ入れ、中から内鍵でロックを掛ける。
 「渡部君。今日ここへ呼んだのは一方的に叱りつけることが目的ではないの。ここなら誰もやって来ないし、立ち聞きされる畏れもないわ。だから先生には本心で話してね。」
 「・・・。」
 渡部という男子生徒は警戒してか、俯いたまま早苗には答えない。
 「あの雑誌は、部活のOBの先輩に渡されたのだと言ってたわよね。」
 男子生徒は答える代わりに小さく頷いてみせる。
 「ああいう写真に興味があった・・・のよね。」
 「・・・。」
 やはり男子生徒は黙ったままだった。
 「あの雑誌には女の人が縛られている写真が載っているわよね。ああいうの・・・、縛られた女性とか、女性を縛ることに何かを感じる?」
 男子生徒ははっきり否定をする風でもなく首を傾げる。早苗はそれを(よくわからない)という意志表示だと受け取る。
 「女性を縛ったら興奮する? すると思う?」
 男子生徒は再び首を横に傾げる。
 「先生が貴方に縛らせてあげるわ。興奮するかどうか、縛ってみるといいわ。ここに縄があるから。」

小俣早苗

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