幼児期

妄想小説


田舎教師



 二十八

 父親の代りに働きに出なければならない母親は、早苗たち三姉妹をよく隣の家に預けていた。その家には早苗と同い年の健太という子が居たので、早苗は妹たちと一緒に遊んで貰っていた。健太とは幼馴染みという関係で気安く遊び相手になって貰える仲だった。しかし健太には悪い兄貴分が付いていた。
 或る時、早苗は健太からお医者さんごっこをしようと誘われた。お医者さんごっこがどういうものか見当もつかなかったのだが、健太には嫌われたくなかったのでおとなしく付き従った。しかしその遊びの首謀者はトオルという健太のよくない兄貴分で、早苗は健太によって家の裏手にある納屋に誘き出されたのだった。
 「健ちゃん。こんな所で遊んでいいの?」
 「ああ、大丈夫さ。普段誰も使ってない小屋だから。今日はここが病院だよ。」
 「ふうん、そうなの。」
 「僕が看護師で、早苗が患者さん。」
 「え、どうして? 私は女だから看護婦は私じゃないの?」
 「だって、早苗が患者じゃなくちゃね。中にお医者さんも居る。あ、トオルさん。患者さんを連れてきました。」
 「トオルさんじゃなくて、先生って呼ばなくちゃ。あ、君が早苗ちゃんかい? 具合が悪いんだって? さ、ここに横になって。」
 「え、私・・・。具合なんか悪くないけど。」
 「早苗ちゃんってば。ここは役になりきらなくちゃ。」
 「そうなの、健ちゃん。ま、いいわ。先生、私具合が悪いんです。」
 「早苗ちゃん、何時から具合が悪いのかな?」
 「さあ、何時かしら。えーっと、昨日・・・からかな。」
 「そうかい、そうかい。じゃ先ずお熱、計ろう。さ、シャツのボタン外して・・・。」
 「えっ? ここ?」
 早苗は差し出された体温計の代りのボールペンを受け取ると、胸の辺りを指差す。
 「そう。シャツを肌蹴て、そこに差し込んで。」
 「はあい。これでよくって?」
 「はい、いい子だね。そのままここに横になって。」
 トオルと呼ばれた年長の男の子は何処からか持ってきたらしい古いマットレスを指し差す。
 「はあい、先生。」
 早苗をマットレスに横たわらせると、トオルは聴診器のつもりらしいイアホンを出して耳に差し込みジャックの先を手で翳す。
 「じゃ、お腹の具合を診てみようか。お腹をちょっと見せてね。」
 そう言うと寝転んでいる早苗のスカートをするりと捲り上げる。お臍の辺りに手をあててポンポンと叩いてみせる。
 「きゃっ、くすぐったい。」
 「ああ、動いちゃ駄目・看護師さん、患者さんが怖がってるから頭の方に廻って両手を握ってあげて呉れるかな。」
 「わ、わかりました。先生。はい、早苗ちゃん。両手を出して。」
 健太は寝そべっている早苗の枕元に回り込むと早苗に両手を万歳の格好で挙げさせて、自分の両手でしっかり握りとめる。早苗も健太に手を握られて、少し不安が遠のく。健太がしっかりと握り込んでくるので、早苗もその手に合わせてぎゅっと握りしめる。しかしそれは自分が両手の自由を奪われるということだとまだ気づいていない。
 「じゃ、お腹の様子観て観ましょう。はいっ、お腹もうすこし広げますよ。」
 そう言ってトオルは早苗のスカートの下のパンツの端を掴むとそれをゆっくりと引き下げていく。
 「え、何だか怖いっ・・・。」
 「大丈夫、痛くないからね。さ、もう少し。」
 早苗は自分の下着がどんどん下されていくことに不安を感じてくる。
 「いやっ、放してっ。健ちゃん、手を放してっ。」
 「駄目だよ。先生がいいっていうまでは我慢して。」
 「そう、怖くないよ。大丈夫だよ。ほおら。」

小俣早苗

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