函館山玲子琢也

妄想小説


男女六人 卒業旅行



 八

 「うわーっ。景色、いいっ。」
 函館山頂上の展望台に降り立った玲子が思わず歓声を洩らす。その背後からゆっくり着いていった琢也が玲子に話し掛ける。
 「なあ、玲子。本当は俺たちと旅行するの嫌だったんじゃないか?」
 「え、ああ・・・。そんな事ないわ。最初はあまりに突然だったんで吃驚しただけよ。こんな風に一緒に旅行出来るんだったら最初からそう計画すればよかったのにって思ったぐらい。」
 「そうか。よかった、それなら。」

 その二人を更に少し間を置いてゆっくり追掛けていく哲平は隣の知世に話し掛ける。
 「なあ・・・。偶然を装って合流したの、ばれちゃった。」
 「あら、私たちの車でも同じ事話してたわ。玲子は気づいていなかったみたいだけど琢也クンはさすがに鋭いわね。」
 「そっかあ。琢也が気づいていたのか。ま、ばれちゃ仕方ないけど仲良くやろうぜ。どうせ一緒に旅行することになったんだから。」
 「そうね。変に隠し事はないほうが気楽に旅行出来るものね。」
 そう言いながらも知世は、そもそもの旅行は茉莉が言い出したものなのだと哲平には告げ損ねる。なんだか自分が哲平に旅行のことを話す事、それによって哲平が男たち三人で巡り合うよう同じ日程で北海道旅行に来るのを、最初から茉莉が見越していたような気がしたのだった。
 (ま、いいか。そんなこと・・・、どっちだって。)
 知世もあまり深く考えないで旅行を愉しむことにしたのだった。

 哲平と知世からまた少し離れて優弥は茉莉と後を追って歩いて行く。
 「なあ、お前だろ。最初からシナリオ考えてたの。だって、知世がそんな事、思いつくわけないからな。」
 「あら、そう? 考え過ぎじゃないの、優弥。」
 「何か企んでるんじゃないか? ま、別にいいけどな。」
 茉莉の様子を怪しみながらも優弥自身、深く考えずにこの旅を適当に愉しめばいいのだと思うことにしたのだった。

 「ここは夜景が有名なんでしょ? 素晴らしいでしょうね。」
 「しかし、玲子。日が暮れてくるまでまだ随分時間があるぜ。」
 絶景の夜景スポットと言われている展望台からの眺めを見下ろしながら皆が揃ったところで玲子の言葉に優弥が反論する。
 「優弥の言うのももっともだな。ここで夜景になるまで待ってたら半日無駄にしちゃうからね。なあ、夜景を見に来るのは北海道最後の日の夜にしないか。北海道の見納めにここにもう一度昇るってのは?」
 「琢也、それはいい考えだな。北海道の見納めに函館の夜景か。うん、そうしよう。それじゃ、次の場所に行こうか。今度は何処へ行くんだ?」
 「函館の山の中腹あたりに港を見下ろせる丘があって、そこに古い教会が幾つかあるの。それを観に行ってみない?」
 「へえ、茉莉は函館に結構詳しいんだな。」
 「そりゃ、ここに来る前に事前に研究しておいたんだもの。哲平とは違うわよ。」
 「ちぇっ、どうせ俺は不勉強だよっ。知世、どうなんだ?」
 「いい考えだと思う。私も函館の教会廻ってみたいわ。」
 「じゃ、車に戻ろうぜ。」
 六人はそれぞれの車を目指して駐車場に戻っていく。

玲子

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