茉莉ナンパ

妄想小説


男女六人 卒業旅行



 四十五

 「あなたたちもここに泊っているの?」
 「ああ、そうだよ。なあ、俺たちとも一緒に遊ばないか?」
 「そうね。どうしようかしら・・・。」
 「確か女三人で来てるんだよな。」
 「ええ、そうよ。」
 茉莉はわざと他に男性三人も一緒だとは言わなかった。
 「白いワンピースの子もいたよな。」
 「あれっ? 玲子のこと? なあんだ、玲子がお目当てか。」
 「何か清純そうな感じだったよね。」
 「それって、私は清純には見えないって意味ね。」
 茉莉は男たちの目線が短いスカートの裾を刺すように見てくるのを感じた。
 「待ってる連れの男の子たちが居るの。じゃ、またね。」
 そう言うと、軽くウィンクをして男たちの前から立ち去る。
 (ミニスカートの裾ばっか覗いてくる癖に、お目当ては玲子なんだ。)
 茉莉は嫉妬心にかられ、ちょっと不機嫌になるのだった。

 「だいたい要領はわかったわ。管理事務所の向う側にレストハウスみたいのがあって、そこで野菜やお肉なんかを売ってるんですって。炭とかはバーベキューコンロの所に置いてあるのをどんどん使っちゃっていいんですって。お酒もあるみたいだから、後で男の子たちで取りに行って。玲子と知世は材料を仕入れにいくから一緒に来てね。」
 「よおし。じゃ、火を起しておくから、どんどん持って来てくれよ。」
 哲平は腕まくりをすると早速火起こしに取り掛かるのだった。

BBQ

 「あれっ、琢也は?」
 バーベキューの途中から姿を消した琢也に気づいた哲平が訊く。
 「あ、コテージに寄って何か荷物を取ってから追加のビールを取りに行くんだって。」
 玲子がそう教える。
 「そうか。もうビールがあんまり残ってないもんな。気が利くな、琢也は。」
 「哲平が気が利かないのよ。ほら、炭がもう終わりそうよ。新しいの、くべて頂戴。」
 「チェッ、俺だって気配りはしてんのさ。そろそろ炭を追加しなきゃって思ってたとこさ。」
 「口の前に手を動かしてね、哲平。」
 「知世までそれかい? 人使いが荒いなあ。」
 そう言いながらも楽しそうにバーベキューを愉しんでいる哲平だった。
 「皆んな、遅くなった。はい、追加のビール。」
 琢也が戻ってきて、ビールの入った包みを優弥たちに手渡す。そこから新しいビールを出してテーブルに並べている間に琢也は目で玲子に何やら合図し、立って傍に行った玲子に小さな紙切れをそっと手渡すのだった。しかし、その様子をじっと見ていたのは茉莉だけだった。玲子は琢也から受け取った紙切れを身に付けていたエプロンのポケットにそっとしまったのだった。

 「ね、玲子。今度はわたしが代わって肉を焼くからちょっとそのエプロン貸してくれない?」
 「あ、茉莉はエプロンしてなかったのね。じゃ、はいっ。」
 玲子が脱いだエプロンをさっと着けると、茉莉が肉のトレイを持ってバーベキューコンロの前に立つ。
 「俺も手伝うよ。」
 哲平がすかさず茉莉の傍にやってくる。
 「あ、ごめん。コンタクトがずれた。ちょっと手を洗って入れ直してくるから。その間、ちょっと代わってて。」
 そう言うと肉のトレイとトングを哲平に預けると、茉莉は一人でコテージの方へ走ってゆく。
 「茉莉って、コンタクトだったんだ。知ってた?」
 琢也がすかさず隣の優弥に訊いてみる。
 「さあ、バスケ部の頃はそんなのしてなかったと思うぜ。茉莉の事だから、目が悪いんじゃなくて目を大きく見せるダテのカラコンとかじゃないか?」
 「え? 何だよ、それ。」
 「あら、琢也って意外と女の子のことは知らないのね。カラーコンタクトのことよ。瞳を際立たせて目を大きく見せるのがあるのよ。わたしはしたことないけど。茉莉ならやってそう。」
 「知世、わたしもカラコンなんてしたことないわ。今度教えて貰おうかしら。」
 「玲子はナチュラルなメイクのほうが合ってるわよ。必要ないっ。」
 「あら、そう? 私もたまには茉莉みたいなメイクして、ミニスカートとか穿いちゃおうとか思っているのに。」
 「へえっ。そんな姿、見てみてえなあ。」
 女の子の話を小耳に挟んでバーベキューコンロの方から哲平が声を挙げる。
 「哲平、話を差し挟まなくていいから、お肉、ちゃんと焼いててよ。」
 「皆んなーっ。ごめん、ごめん。哲平っ、今代わるわね。」
 コテージの方から走って戻ってきた茉莉が再び加わるのだった。

茉莉

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