妄想小説
男女六人 卒業旅行
三十
同じ頃、女性部屋では女同士での議論が盛り上がっていた。
「ねえ、茉莉。今日みたいな短いスカートばかり穿いていて男の子たちにパンツ見られちゃうんじゃない? さっきだって食事処で男の子たち、ずっと貴方の膝元ばかりちらちら見てたわよ。」
「あら、そんなの平気よ。それにそんな簡単に下着を覗かせたりしないわ。見えそうでいて見えないぎりぎりが一番男の目をそそるのよ。」
「まあ、それじゃ男を誘っているようなものじゃないの。嫌だわ、私。そんなの。」
「そういう知世こそ、もっと着るものに気を使ったほうがいいんじゃない? ミニスカートは貴方には無理でしょうけど、もっと女らしい服装にしたら。玲子なんかスカート以外穿いてるの見たことないわ。もっとも玲子はちょっとブリッコ過ぎるけどね。」
「え、ブリッコって私が?」
「そうよ、玲子。貴方っておしとやかなお嬢さんをずっと演じてるでしょ。」
「そんな・・・。そんなつもりは私はないけど。ただ、肌を露出するのはちょっと恥ずかしい。」
「で、どうだったの。今日一日。ホットパンツだったけど生脚を晒して観てどうだったの?」
「あ、意外と普通だった・・・。ミニスカートと違ってパンツ見られるって心配がないからかな。」
「男子たちの玲子を観る目は全然違ってたわよ。玲子の魅力にどきっとしてたみたい。」
「私も茉莉のいう通りだと思う。琢也なんか、一緒に自転車乗ってて舞い上がってたんじゃないかしら?」
「え・・・、そんな事。」
玲子は足が攣って琢也が咄嗟に自転車から抱きかかえて降ろしてくれて足を擦ってくれたのを思い出していた。自分の生脚の肌に触れられているのに、嫌な感じは全くなかった。むしろ永遠に琢也の手が自分の脚から離れないで欲しいとさえ思ったほどだった。
(あれは、ホットパンツで生脚を晒していたせいなのだろうか・・・。)
もしそうならもっと普段から脚を出していてもいいのかもしれないと玲子は思い始めていた。
玲子はその日初めて肌を晒して過ごしたことにそれほど罪悪感を感じなかったことを意外に思っていた。そのせいではないかもしれないが足が攣って琢也に揉んで貰った時に、肌と肌が触れ合うことの快感に気づいてしまったのだった。それはそれまでには持ったことの無かった感情で、初めて好きな男子と抱き合うという肉体的な欲情を憶えたのだと思い始めていた。玲子は茉莉が言った(愛があるから欲情が生まれるのよ)という言葉の意味が初めて判ったように思う。
「知世はこの旅行に来てからずっとパンツルックよね。そんな格好ばかりしてたら、いつまでも処女は捨てられないわよ。」
茉莉が今度は知世の方に反撃する。
「茉莉。知世は結婚する相手だけに処女を捧げるつもりでいるだけなのよ。」
「あら、処女を捧げるだなんて随分古めかしい考え方ね。そうなの、知世?」
「別にそんなんじゃないわ。でも誰とでもセックスしたいわけじゃないのは確かよ。」
「へえ。一応性欲は一人前にあるみたいじゃない。」
「え、そんな。茉莉ったら。勿論、性欲だって普通にあるわよ。」
「でも知世はバージンなんでしょ?」
「うっ。それは・・・。それは偶々よ。したい相手が偶々居なかったからというだけで、結婚まで処女を守るっていうつもりはないわ。」
「へえーっ。知世がそんな事言うの、初めて聞いたわ。でもそんなんじゃ、オナニーで自分を慰めるしかないわね。オナニーぐらいはするんでしょ、性欲はあるんだから。」
「オナニーは自分を慰める為じゃなくて、その日の為の練習を積んでいるだけよ。」
「あら、知世。それは居直りってもんじゃない? でもオナニーするっていうのは否定しないんだ。」
「・・・・。」
知世は返事を出来ずに黙ってしまう。
「玲子、あなたはどうなの?」
知世が答えに窮しているので茉莉は話を玲子のほうに振る。
「わ、私も一番好きな相手と出会えたらしたいけど、結婚するまで処女を守ろうという訳じゃないわ。」
「いかにも玲子らしい優等生っぽい回答ね。ということは玲子も処女なのね。」
「茉莉はもう処女は捨てたのね。そう言うからには。」
「そんなのとっくよ。」
「え、何時? 何時なの?」
「中学の時よ。」
「それじゃ、やっぱり相手は優弥なのね。茉莉の相手って。」
「あら、いやだわ。今、同級だった男の子たちと一緒なんだからそんなの答えられる訳ないじゃない。秘密よ。」
そう答えた茉莉だったが、明らかに動揺している風に玲子には見えたのだった。
「玲子はどんな事を夢想してオナニーをするの?」
茉莉は話の矛先をかわす為に更に玲子に追求する。
「私が夢想するのはドラマチックな展開かな。悪い奴等に捕まって襲われそうになるの。そこへ好きだった人が突然現れて助け出してくれる・・・みたいな?」
「あら、玲子って案外マゾっ気があるのね。それって襲われてみたい願望が潜在意識にあるのよ。」
「えーっ? そんなあ・・・。」
他愛ない会話なのだが、茉莉にはその時あるアイデアが閃いたのだが、他の二人はその事には気づいていない。
次へ 先頭へ