妄想小説
男女六人 卒業旅行
三
「それじゃ、湘東第一中学、三年一組の同窓生の再会を祝って乾杯をしたいと思います。カンパーイっ。」
「カンパーイ。」
幹事である哲平の音頭で皆が乾杯の盃をあげる。
「それじゃ、この後は歓談タイムとしますので、それぞれ自由に暫くご歓談ください。」
哲平はそう告げると知世等が居る昔の仲良しグループの輪に戻ったのだった。
「おーい、哲平。こっち、来いや。知世もいるぜ。」
「なんだよ、優弥。知世とは受付一緒にやっただけだぜ。」
そう言いながらも哲平は、中学時代の仲間である優弥、琢也が居るテーブルへやって来る。そこには知世と同じく女性達の仲良しグループである茉莉、玲子も一緒なのだった。哲平と知世が幼馴染みである関係で、この男女六人は中学時代から気軽に話しが出来る仲間とも言えた。
「おう、哲平。ほら、グラス。久々の再会に乾杯し直そうや。」
「ああ、琢也。ありがとう。じゃ、皆んな。カンパーイ。」
「カンパーイ。」
「で、何話してたんだい、今まで。」
「ああ、俺たち中学卒業の後はみんな高校からバラバラだったろ。どうしてたのかって確認してたところさ。」
「琢也は湘東高だったよな。そうだ。そう言やあ玲子も湘東高目指すって言ってなかったっけ。」
「いやだ、哲平クン。最初のうちだけよ。三年の三学期に担任からお前の偏差値じゃ難しいって言われて湘東女子にしたのよ。恥掻かせないで。」
「なんで恥なんだよ。湘東女子だって立派な進学校だぜ。贅沢言うなよ。俺なんか最初っから大学入試が心配ないN大付属だぜ。」
「あそこはN大に芸術学部があるから志望だって言ってたじゃないか。」
「いや、それこそ偏差値が高くてさ。芸術学部には入れなかったんだよ。それで経済学部で我慢して、落研で修行って訳。お前はスポーツ推薦で藤蔭学園だったよな。まだバスケ、やってんのか、優弥?」
「いやいや、もうとっくだよ。バスケ、辞めたのは。藤蔭学園って全国の強豪校からいっぱい入って来るからな。怪我もあったし、高校時代にバスケは止めたよ。まあ、哲平と同じで大学はそのままエスカレータで苦労なかったけどな。」
「茉莉とは何時まで付き合ってたんだ?」
「何時までって、最初から付き合ってなんかねえよ。ただ男子バスケ部と女子バスケ部の夫々キャプテンだったってだけだよ。なあ、茉莉っ。」
「えっ? まあ、そうね・・・。」
そう言いながらも茉莉がちらっと横目で優弥のほうをチラ見したのを哲平は見逃さなかった。
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