濡れた路面

妄想小説


男女六人 卒業旅行



 六十四

 「う、まずいな。雨だ。畜生。こんな時に限って。」
 雲行きが怪しくなってきたと感じてはいたが、それから雨が降り出したのはすぐだった。
 「玲子、大丈夫か?」
 「う、うん・・・。」
 そう答えた玲子だったが、額からしたたりおちる雨の滴の下で蒼褪めた顔をしているのが判る。滑るといけないと手を貸してやって、玲子の指がとても冷たくなっているのに驚く。
 「大丈夫・・・・、じゃないよな。どこか雨宿りするところを見つけなくちゃ。」
 そう言いながらも来る時は追い掛けるのが必死で、雨宿り出来るような場所が途中にあったかどうかも定かではなかった。
 「あ、あそこに何かある。小屋みたいだな。とにかく言ってみよう。」
 玲子を元気づけるように肩を抱いてやるが、玲子の身体も既にずぶ濡れになっている。

山小屋

 その小屋はもう随分長く廃屋になっているらしかった。鍵は掛かっていなかったが、その代りに殆ど中に何も無い様子だった。とにかく雨をしのげるだけでもマシと、玲子の手を引いて中に入る。その玲子の身体は寒さの為か、ガクガク震えているのだった。
 「火を起せないか、捜してみよう。ちょっと待ってろ、玲子。」
 自分自身も雨の滴を顎からポタポタ落しながら、小屋の中を探し回って、古そうな一斗缶を見つける。幸運な事に、棚の上に古い新聞紙とマッチの箱を見つけたので一斗缶にその辺から拾った木を薪にして火を起すことにする。
 新聞紙からやっと薪に火が移ってきたのを確かめて、玲子の方を振り返ると隅のほうで身体を抱えて蹲っている。
 (何とかしなくちゃ・・・。)
 更に小屋の中を探っていて、以前に小屋を使っていた人のものらしい古い毛布を見つける。それを引っ張って来て、玲子の身体の上に掛けようとして哲平はちょっと思案する。以前に聞いた事がある冬山での遭難で生き延びた人の話を思い出したのだ。冬山ではないものの、すっかり雨に打たれてずぶ濡れになり、相当体温が落ちているのが自分でもよく分った。一斗缶の焚火では充分に身体を温められそうもない。
 「玲子。服を脱ぐんだ。」
 そう言って自分もシャツを脱いで上半身裸になる玲子は自分で服を脱ぐのも億劫そうなほど体力が落ちている様子だったので、手伝って服を抜かせる。下着までぐっしょりになっているので、躊躇せず身体から剥ぎ取ると毛布を上から掛けてやり、奥の方の敷き藁が積んである場所に寝かせ、自分も裸の身体で毛布の中に入り込むと冷たくなった玲子の身体を抱いてやる。
 「ありがと・・・、哲平。でもズボンが冷たい。」
 そう言われて自分が穿いているズボンもぐっしょりになっていることに気づいて覚悟を決める。
 「今、脱ぐからちょっと待ってろ。」
 哲平も玲子と同じく全裸になってしまうと裸の身体と身体を密着させる。するとだんだん身体がかっと熱くなってくるのが感じられた。しかしそれと同時に、裸で玲子を抱いているのだと思うと、おのれのモノが硬く大きくなってきてしまうのを止められなかった。
 「ご、ごめん。玲子・・・、あの・・・。」
 「いいの、哲平。気にしないで。身体が少し温まってきた。もっと強く抱いてっ。」

玲子

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