妄想小説
男女六人 卒業旅行
四十九
男の手が下穿きに掛けられたのを感じる。両手、両足が縄によって開かされているので、玲子にはどうすることも出来ない。
ビリッ。
再び布が引き裂かれる音がする。玲子のショーツが引き千切られた音だった。
(ああ、やめてっ。 誰か、助けてっ・・・。)
「玲子たち、遅せえなあ。」
哲平が玲子に(たち)という言葉を付け加えたのを知世もすんなり受け入れていた。
「男女のことは外部の人が詮索すべきじゃないわ。」
知世に言われて、その言葉を聞くのが二度目であるような気がした。
「なあ、俺たちも外に出てみようか。」
珍しく二人になろうと哲平が言い出したことに知世は驚いたが、酒の力がそうさせているのは間違いなさそうだった。しかし知世も素直にそれを受け入れるぐらいには酔っていた。
「いいわよ。」
コテージの奥ではまだ優弥と茉莉が何やら話しながら呑み続けていた。体育会系のせいなのか、優弥も茉莉も幾ら呑み続けても平気な風だった。
コテージの外はすぐ湖の畔だった。闇の中にひっそりとたたえる湖面に映る夜空は満天の星が輝いていた。
「座ろうかあ。」
その畔に置かれた横長のベンチに哲平は知世を誘う。
「うん。」
「俺は琢也には玲子の方が合ってると思う。」
誰よりなのかは哲平は言わなかったが、知世はそれを察した。
(お前には俺が一番合ってると思う。)
それが哲平が用意していた次の言葉だった。それをいつ言い出そうかと躊躇っていたのだ。
「知世。あのさ・・・。」
やっと哲平の口からその言葉が出始めた時、遠くからけたたましく走り寄ってくる足音が聞こえ、白い影のようなものが近づいてくるのが見えた。
「あれっ、玲子・・・?」
(玲子って、あんなに足が速かったっけ)と哲平が首を傾げるような速さだった。畔のベンチに座る哲平と知世に気づく間もなく、玲子はコテージに飛び込んで行った。
「どうしたんだ、玲子のやつ?」
哲平も知世もベンチから立上り、玲子の後を追う。
「茉莉っ。玲子どうしたのかしら。」
「今、寝室に飛び込んでいったところよ。わたし、見てくるからちょっとここで待ってて。」
茉莉がコテージに入ってきた哲平と知世を制して、一人で二階の女子用のベッドルームに上ってゆく。
「玲子、ひとり・・・だったよな。」
狐につままれたような顔をしながら哲平がぼそりと言う。奥で呑んでいた優弥も事態が呑みこめずにただ茫然としているのだった。
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