妄想小説
男女六人 卒業旅行
七十
やっと再び一緒に出発することが出来た六人は、摩周湖の展望台の上に来ていた。六人はもうすっかり三組の恋人同士になっていた。
「凄い眺めね。これが摩周湖なのね。」
そう言った玲子はこの旅行に最初に来た頃の笑顔に戻っていた。散々な目に遭った茉莉も、全て無かったかのように何時もの姿に戻っている。
「なんか摩周湖って、恋人同士で訪れるのにぴったしっていう感じね。」
もうすっかり哲平と恋人同士を気取っている知世も悪びれずに言うのだった。
「あれっ、なんか白い物が流れてくるわ。」
「玲子、あれは有名な摩周湖の霧よ。直にここも真っ白になるから。」
北海道通の茉莉が予言した通り、白い霧はどんどん六人の方に押し寄せてきていた。
「え、怖いわ。どんどん何も見えなくなっていく・・・。」
「大丈夫だよ、知世。俺の手をしっかり握ってろよ。」
哲平が知世に寄り添うように立つと肩から抱きしめる。それを見た玲子も琢也の手を探る。茉莉と優弥も既に寄り添っていた。
いつしか摩周湖の展望台の上で三組の恋人同士が霧で周りに見えないのをいいことに唇を重ねていくのだった。
霧が晴れた時、やっと心が決まった茉莉が宣言する。
「ねえ、もう私たち夫々で旅を続けることにしない? 車は二台だから取り敢えず私と優弥を女満別空港まで送ってってくれない。そこから優弥と私、飛行機に乗る。」
「じゃあ、俺と知世はそこから北へ向かって稚内を目指すことにするよ。」
「それじゃ、僕は玲子を連れて西へ向かって札幌を目指すから。」
お互いが頷き合うと、最後のドライブを美幌峠を越えて女満別空港に向けて走ることになるのだった。
完
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