妄想小説
男女六人 卒業旅行
三十一
翌日は有珠山と昭和新山の観光で山登りをする六人だったが、男三人も女三人も何故か眠そうにしている。
「連日の運動で疲れたみたいだね。大丈夫、玲子?」
前日のサイクリングで足が攣ったのを知っている琢也は玲子を気づかって訊いてみる。
「ううん、大丈夫。ただ、昨夜三人で話を随分夜遅くまでしてたから寝不足なのかな。」
「ふうん。俺たちも結構遅くまで話してたからな。何を話してたのかあまり覚えてないけど。ちょっとビールを飲み過ぎたのかもしれない。」
この日も玲子は山登りになるからというので茉莉から借りたホットパンツ姿で居る。茉莉は勿論ミニスカートを変えない。しかし相変わらず知世はジーンズで脚を露出しない格好を続けている。
「凄かったわね、有珠山と昭和新山。迫力あるわ。この前噴火したのって何時だったかしら、茉莉?」
「確か7年ぐらい前だった筈よ、知世。」
「何か有珠山の噴火って予知しやすいらしいんですってね。だからその予兆がない時は安全なんだってガイドブックに書いてあったわ。」
「へえ、知世もいろいろよく調べているのね。私は泊る場所とかは結構調べたけど、地理や歴史まではよく知らないわ。」
「なあ、優弥。次は支笏湖まで行って泊るんだって茉莉は言ってたよな。室蘭を抜けて海側を廻るのと、山越えで支笏湖へ抜けるルートがあるみたいだけど、どっちがいいかな。」
「さあな。茉莉に訊いてみたらどうだ。」
「なあ、茉莉。支笏湖まで山を越えるのと海を廻るのとどっちがいいかな。」
「海を廻るのは室蘭の方でしょ。あそこは工業地帯だからあんまり眺めも良くないし、山を抜けていきましょうよ。」
「そうか、わかった。今度は俺も運転しようかな。いいだろ、優弥。」
「私ももう一度、運転してみたい。運転って意外と楽しいし、もう一台が哲平の運転ならそんなに遅れることも無い気するから。」
「なんだよそれ。随分見くびられたみたいだな、茉莉。でもまあゆっくり行こうか。山道だしな。」
茉莉の運転する車には助手席に優弥が、後部座席には知世が乗ることになる。一方の哲平が運転する車には心配だからと琢也が助手席に乗り、後ろに玲子という組合せになった。
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