妄想小説
男女六人 卒業旅行
六十七
昼間のカヌーで哲平から始めて唇を奪われそうになったことで、その夜に哲平に身体を許して知世は処女を捨てる決心をしていた。その期待に燃えていただけに阿寒湖畔に到着するや否やで哲平が玲子と忽然と姿を消してしまったことに知世は大きく傷ついていた。
考えないようにしても、どうしても哲平が玲子を抱いている姿を想像してしまうのだった。玲子が哲平を誘惑するとは思えないのだが、哲平が密かに玲子に憧れを抱いているのは以前から感じていた。
(玲子は今、琢也とうまくゆかずに傷心で落ち込んでいる。そんな時に二人っきりで長い間居るとなれば、何かが起こらないとも限らない。)
そう知世は考えてしまうのだった。一度、そんな思いが頭に浮かんでしまうと、もうそこから抜け出せなくなるのだった。気がつくと、下着の中に指を突っ込んで自分自身を慰めていた。しかし性への渇望は一向に癒されないのだった。
隣の部屋では優弥が同じく眠れない夜を迎えていた。優弥が放った一言で茉莉はぷいっと出ていってしまったきり、戻ってくる様子はなかった。優弥自身も茉莉と過ごした昼間の出来事から夜にもう一度抱くことになることを予感していた。それだけにお預けを喰わされた気分だった。
(あいつの事だから、またどこかで色目でも使っているのではないか)
そんな時に、優弥の背後でドアが静かに開かれる音がして振り返る。
「知世・・・。どうした。」
開かれた扉の前に立つ知世は上着を脱いでいてブラしか着ていなかった。下半身にジーンズは着けているのだが、前のボタンは外されていて裸の腹が覗いているのだ。
「私・・・。パンティ、穿いていないの。優弥に抱いて欲しい。」
それだけ言うと、茫然と立ち尽くす優弥にいきなり抱きついてきたのだった。
目が覚めた玲子は外の雨が何時の間にか止んでいるのに気づいた。もう身体の震えは止まっていたし、毛布に包まって充分身体も温かくなっていた。
パチパチ音がするほうを毛布をずらして覗いてみると、哲平の裸の背中が見えた。一斗缶に木をくべて焚火をしているのだった。自分の下着が木の枝に広げて差してあり、火の前に翳されていた。
「哲平・・・。」
「ん? 玲子、起きたのか。大丈夫か?」
「うん。それ・・・。」
「ああ。もう殆ど乾いたみたいだ。服もだいたい乾いているから。」
哲平があちこちに干してあった玲子の服や下着を掻き集めると、毛布から裸の肩を覗かせている玲子のところへ持ってくる。哲平自身もトランクス一枚の姿だったのを、同じように干してあったズボンを拾い上げて身に着ける。
「あっち、向いてて。」
そう言って哲平に後ろを向かせている間に、さっとショーツに足を通す玲子だった。
次へ 先頭へ