阿寒湖畔呼びとめ

妄想小説


男女六人 卒業旅行



 六十二

 車が阿寒湖畔に着いて皆でロッジまで荷物を運び込む隙をついて茉莉は琢也を物陰に呼び寄せた。
 「琢也、ちょっと。」
 「なんだい、茉莉。」
 「話しておかなくちゃならない事があるの。あのね、支笏湖のキャンプ場で玲子と待合せをしたでしょ。あの時、実は玲子・・・。強姦されて処女を喪ったの。それで、あなたの事は受け入れられないって思ってるみたいなの。」
 「え、何だって? そ、それは・・・。」
 「だから、玲子を立ち直らせるのは貴方しか居ないと思って。それだけ伝えたかったの。」

 茉莉から話を聞いた琢也はすぐさま玲子を捜しだす。
 「玲子。君が僕に冷たくしてるのは、あの時暴漢に襲われたからなのか? 処女を喪ったって、そのせいで、僕を拒んでいるのか。だとしたら僕は・・・。」
 「誰から聞いたの、それを。ああ、琢也に知られてしまうなんて。」
 「僕はそんな事、気にしてないよ。だから。」
 琢也は玲子の肩を抱き寄せようとする。しかし、その手を玲子は強い力で振り払ったのだった。

泣き顔玲子

 「やめて。お願い。わたしに触らないで。」
 「えっ・・・。」
 玲子に強く振り払われたことで、琢也は大きく項垂れる。
 「ああ、何てことだ。全部、僕のせいだ・・・。」
 そう言うと琢也は頭を抱えて駐車場の方へ走り出す。
 「待って。違うわ。琢也のせいじゃ・・・。琢也のせいじゃないのよ。わたしが・・・。ああ、どうしよう。」
 遠くで車のエンジンが掛かる音がする。
 「ああ、どうしよう。何とかしなくちゃ。あ、哲平。」
 ロッジから出て来た哲平の姿を認めて、玲子は走り寄る。
 「お願い、哲平。運転して琢也を追わせて。早くっ。」
 玲子は哲平をもう一台の車のほうへ引っ張って行く。何が起こったのか、はっきり判らないながら、哲平は玲子の必死な様子に車に乗り込むと、助手席に玲子を乗せて車をスタートさせたのだった。
 「あっちよ。あっちの方だわ。」
 車の窓を開けて、かすかに聞こえる車のエンジン音を聞きわけながら、玲子は進むべき方向を哲平に指示する。


茉莉

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