妄想小説
男女六人 卒業旅行
五十九
細岡展望台の駐車場に車を乗り入れた琢也は、玲子を誘って展望台への道を歩き始める。
「あっちみたいだな。」
展望台と書かれた矢印看板の先には細い遊歩道のような道が続いている。シーズン外れなのか、観光客も殆ど見当たらなかった。玲子は琢也と二人っきりで歩くのに気づまりを感じ始めていた。
「手を繋いでいこうか。」
何気なく玲子の手を取ろうと手を出した琢也だったが、玲子はかぶりを振る。
「ううん。一人で歩く。」
玲子の返事はにべもなかった。
「そうか。」
再び会話は途切れてしまったのだった。
展望台の上までやって来た琢也と玲子だったが、いつもなら必ず出る玲子の絶景を前にしての歓声もあがらない。
「なあ、玲子。俺の事、避けてないか?」
「・・・。別に。」
「あの夜、いったい何があったんだ?」
「お願い。あの時のことは口にしないでっ。」
「だけど、俺は玲子のことが気になってしかたないんだ。」
「琢也には茉莉がいるでしょ。」
玲子にきっぱりそう言われて、琢也は言葉に詰まる。
「い、いや。茉莉とはそんな関係じゃないんだ。」
そう言ってみた琢也だったが、後ろめたさに胸が痛む。大沼のボートの上で未遂ではあったが、茉莉のパンティの中に手を入れて抱き合っていたし、襟裳岬のラブホテルでは挿入こそしなかったものの、茉莉にフェラチオまで許していたのを琢也はあらためて思い出していた。
次へ 先頭へ