妄想小説
男女六人 卒業旅行
二十八
海岸沿いの道から逸れて山を登り始めてすぐに二台の車は見晴らしのよい高台に出る。優弥が窓から手を出して合図をして茉莉の運転する車を停める。
「ちょっと降りてみようぜ。」
そこはその日の目的地の洞爺湖が見下ろせる峠の見晴らし台だった。
「あそこが洞爺湖ね。湖の中に島が見えるわ。茉莉、あれは?」
「中之島っていうのよ。ああ、ただ洞爺湖以外にも中之島はいろいろあるけどね。」
「ふうん、そうなんだ。あの富士山みたいのは?」
「あれは羊蹄山だと思う。玲子、ぐっすり寝た後で、元気が出てきたみたいね。」
「あ、そんなにずっと寝てた? 恥ずかしいわ。」
「ああ、口開けて鼾掻いてた。」
「え、琢也。嘘でしょ。ねえ、茉莉?」
「さあ。うふふ・・・。」
「おうい。茉莉。今夜はここでどっか見つけて泊るんだろ?」
「ええ、哲平。降りてったところに洞爺湖レイクサイドホテルっていうのがある筈。空いていればそこにしようと思うの。どう、優弥?」
「ああ、いいんじゃないか。どう?」
優弥が知世のほうを向いて意見を聞く。
「私は全部、茉莉に任せるわ。」
「じゃ、行ってみましょう。」
再び六人は夫々の車に乗り込むと、湖の方へ降りてゆくのだった。
レイクサイドホテルのロビーにやって来た六人は優弥と哲平が代表で部屋の交渉に当たることにする。
「あの、今晩一晩なんですけど。男三人、女三人で部屋を取りたいんですが、空いてますか?」
フロントの若い男が哲平たちの顔とロビーの奥で待っている四人の様子を見比べて言う。
「ツインの部屋三室を取るのと、四人部屋二室を取ることが出来ますが、どちらに致しましょうか。」
「値段はどう違うの?」
「バーカ、哲平。値段の問題じゃないだろ。ツインの客室三部屋取ったら、どう部屋割りすんだよ。女たちに却下されるに決まってるだろ。」
「そ、そうだよな。あ、四人部屋二室でお願いします。」
「かしこまりました。」
フロントのクラークが鍵を用意している間に哲平はぼっそりと言う。
「やっぱ、男女一部屋は無理だよな、優弥。」
「男二人、女二人で二部屋使ったとしたって、もう一部屋はどうしたって男女だぜ。誰がその部屋になるかは揉めるだろうな。」
「だよな。無理だよな。」
クラークから鍵を受け取ると四人のところへ戻る優弥と哲平だった。
「取れたぜ、案外すんなりとな。304号室と305号室だって。」
「湖を見張らせる露天の温泉があるっていうから、部屋へ行ってまずは風呂に入るか。」
「そうしましょう。女子は305にするわね。鍵、優弥。」
茉莉がひとつ鍵を受け取るとエレベータに揃って向かうのだった。
エレベータの中で、琢也はチラッと茉莉の顔を盗み見る。洞爺湖を見晴らす峠へ着くまでの間、恋人繋ぎをしていた茉莉の手が、そっと外された。自由になった琢也だったが、茉莉の太腿から手を動かすことが出来なかった。すると茉莉の手が更に伸びてきて琢也のズボンの股間に触れたのだった。外からでもその部分は硬くなっているのがはっきり分った筈だった。その手を感じながら、琢也も太腿の上の手を更に奥に伸ばしてしまったのだった。しかし、エレベータの中での茉莉は、そんな事はまるで何も無かったかのように澄まして前を向いているのだった。
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