茉莉襟裳岬

妄想小説


男女六人 卒業旅行



 五十二

 「着いたわ。ここが襟裳岬なのね。」
 駐車場に車を滑り込ませると、茉莉は琢也の手を引っ張って岬を見下ろす崖の上へ向かう。
 「こっちは人が多いから、あっちの方へ行ってみましょ。」
 手摺りが設えられている観光客がたむろする展望台をわざと避けて、ひと気の少ない崖の方へ琢也を引っ張っていく。そちらからも崖の下の岬が見下ろせるのだが、手摺りの無い場所でちょっと怖い。しかも風が強いので吹き飛ばされそうになる。
 「ね、怖いから後ろで手を支えていてくれる。」
 そう言って茉莉は琢也に背中を向けて両手を後ろに突き出す。しかし後ろ向きなので親指の位置が合わないことに気づいて、茉莉は背中で両腕を交差させる。

背交差恋人繋ぎ

 琢也がその手を掴むと、もう放さないとばかりに茉莉の手が恋人繋ぎをしてくる。恋人繋ぎは双方が手を離そうとしない限り、解く事が出来ないのだ。しかし琢也にしっかり握られていると思うと安堵感があるのか、茉莉は崖の方に身を乗り出すようにして下の方を見下ろしている。
 「子供達が歩いていくわ。あんなに小さくみえる。」
 しかし、崖の下からは強い風が吹きつけてくる。茉莉の短いスカートも煽られて大きく翻りそうになる。しかし後ろ手に琢也に両手を握られている茉莉にはスカートの裾を抑えることが出来ない。

高台

 「あ、子供達が気づいたみたい。こっちに指差している。あ、スカートが捲れてるの見てるんだ。ああ、見られちゃう。」
 しかし茉莉は、スカートが翻って下着が覗いてしまうのを一向に気にしている風がない。むしろ子供達に見せつけているようにしか思えないのだった。
 琢也は握っている茉莉の手を解いて放すべきか迷う。自分が握っている限り茉莉はスカートの中を丸見えにしているままなのだった。しかし琢也には手の力を緩めることが出来ない。茉莉も両手をしっかり握りしめているように思える。もはや琢也が両手の自由を奪っているのか、茉莉が手を離そうとしないのか判らなくなっていた。茉莉が自分の目の前で翻ったスカートからショーツを覗かせているのだと思うと、琢也はおのれのモノがまた硬くなってくるのを感じ始めた。しかも茉莉もお尻で琢也の下半身の異変に気づいているようで、恋人繋ぎにした両手を引っ張って琢也の腰を更にいっそう茉莉の身体に密着させようとするのだった。
 「ああ、見られてる。恥ずかしい。子供達がわたしたちの事、覗いているんだわ。」
 その声は明らかに琢也を挑発しているのだった。
 「なあ、茉莉・・・。休憩出来る処にゆかないか?」
 茉莉の耳元で琢也の囁く声がした。その声はひっくり返りそうに掠れていた。茉莉もその意味がすぐに分かる。峠に車で登ってくる途中、脇道からそれた場所に少し前に皆で泊まらざるを得なかったのと似たような建物がちらっと見えたからだ。
 「連れてって、琢也。」
 茉莉も聞こえるかどうかという小声でそっと囁いたのだった。

茉莉

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