妄想小説
男女六人 卒業旅行
二十四
茉莉は優弥の前に無様に転んでしまっていて、スカートの中を見られないように飛び降りようとしたのに、下着を丸見えにさせてしまっていた。
「茉莉、大丈夫か。」
優弥は茉莉のパンツを見なかった振りをして、茉莉に手を伸ばす。
「あ、ありがとう。大丈夫。怪我はしてないわ。ちょっと痛いけど。」
「タンデムって、二人で息を合せて降りないと危ないんだよ。」
優弥は茉莉を労わるように手を取ると、ぐっと引き寄せ立上らせようとする。そのせいで優弥と茉莉の顔が急に近づく。その茉莉の唇に優弥が唇を合せようとする。
しかしその唇は茉莉のそれに到達する前に茉莉の手のひらで塞がれたのだった。
「駄目よ、優弥。キスする時は、してもいいって訊ねなくっちゃ。それでいいって言わたら出来るのよ。」
「なんだよ、それっ。」
「これで、おあいこね。」
茉莉は中学最後の日の部室での事を思い返していたのだった。
「ねえ、優弥。もう引返しましょ。途中で彼等と落ち合えばいいわ。」
「ああ、いいよ。行こうか。」
「ね、今度は私が前に乗るから。優弥は後ろね。」
「お前、いいのか。そんなスカートで。前から見たら丸見えだぞ。」
「大丈夫よ。ミニスカートでも覗かれないコツはちゃんと知ってるんだから。」
「だってお前。さっきは丸見えだったぞ。」
「あれは優弥にサービスしたの。普通は男の子に見せたりしないもん。」
「何がサービスだよ。転んだから慌てて油断してたくせに。」
「いいから、行くわよ。」
二人は哲平と知世がこちらに向かっている方法へ再び走り始める。
「ちょっとこの辺で休んでいこうぜ、知世。」
「あら、もう疲れちゃったの?」
「いや、そうじゃないけど。ただ、漕いでばかりじゃせっかくいい景色の場所も記憶に残んないんじゃないかと思ってさ。」
「それもそうね。確かにこの辺、いい景色だわね。」
「じゃ、そこに停めようか。先にお前、降りていいよ。俺が自転車抑えておくから。」
「あら、優しいのね。」
「いやさ。この自転車借りる時に、レンタル屋の親爺に言われたんだよ。タンデムって二人一斉に降りようとすると倒れやすいからって。」
「へえ、そうなんだ。はい、降りたわよ。」
「よし、じゃ俺も。よいしょっと。そこの木陰に座ってろよ。俺、この自転車ここに倒しとくから。」
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