車選び

妄想小説


男女六人 卒業旅行



 六

 函館に着いて青函連絡船を降りたった六人がまず向かったのはレンタカー屋だった。
 「なあどうする、琢也? 六人で一台は無理だよな。」
 「二台借りればいいんじゃないか。運転出来るのは茉莉も含めて四人居るんだから。それでいいだろ、茉莉?」
 「いいけど、私あんまり運転上手い方じゃないから、小さめの車にしてね。」
 「じゃ、下から二番目のクラスのセダンにして二台、色違いのを借りようか。すぐに区別できるように。じゃ、このセダンタイプをクリーム色のと赤い色の二台お願いします。おい、琢也。金は後で割り勘でいいよな。」
 ここでも幹事役を買って出た哲平がレンタカー屋の受付嬢と交渉する。

 「えーっ、二台借りて来たの。私たち、どう分乗するの?」
 「うーん。女二人と男一人で一台。女一人と男二人で一台かな。」
 「え? 女一人で乗る車が出来るの? 私、いやだなあ・・・。」
 「何を今更、子供みたいな事いってんだよ。もういい大人なんだからさ。だって女三人、男三人にしたら茉莉がずっと運転することになっちゃうし、女三人に男一人運転手だと、窮屈だし男一人も可哀想じゃないか。どうせ行先毎に運転と乗る車を代わればいいんだし、やっぱり男女混ぜて三人ずつしかないだろ。」
 「いいじゃないの。最初の女一人は私がなるから。知世と玲子は最初は一緒でいいよ。でも途中からは少しずつ交代ね。」
 物怖じしない茉莉が最初にそう宣言する。そうなると、玲子も知世も嫌とは言えないのだった。
 「君たちはどうするの。どう乗り分けるのか決めてっ。」
 「えっとそれじゃ俺が女の子二人を乗せて最初運転するから。それでいいだろ、優弥。哲平。」
 「ああ、いいよ。こっちは俺が最初運転するから、哲平。お前は後部座席な。」
 「え、まあいいけど。それじゃ、そういう分乗で出発だ。」
 琢也が運転することになったクリーム色のカローラは後部座席に玲子と知世が乗り込む。一方の真っ赤なカローラは運転する優弥の隣の助手席に茉莉が乗り込み、哲平は一人後部座席に乗ることになる。三人ずつを乗せた二台のカローラは最初の目的地である函館、牛臥山の山頂を目指すことになったのだった。

 「さすが、琢也は運転が上手いわね。」
 後部座席から玲子が声を掛ける。
 「そんなでもないさ。去年、免許を取ったばかりだからね。」
 運転をしながらバックミラー越しに玲子と知世の顔を見比べて琢也が答える。

三人ドライブ中

 「あのさ・・・。船の上では偶然逢ったって言ってたけど、そんな偶然ないよな。」
 「え? そうなの・・・。」
 思ってもみなかったことを言われて玲子は隣の知世の顔をじっと見る。
 「・・・・。ごめん。実は・・・。偶々、哲平に旅行のこと教えちゃったの。そしたら、皆には黙ってて偶然途中で出遭ったように仕組むから黙っててって言われてたの。」
 「え、知世ったら・・・。わたし、凄い偶然だと思ってた。おバカね、私。」
 「そんな事、 ないよ。俺も船の上では最初、偶然だとばかり思ってたよ。」
 「ほんと、ごめん。哲平が絶対言っちゃ駄目っていうから・・・。」
 「いいわよ、知世。結果、良かったんだから。茉莉にばかり運転させることになってたら、本当に申し訳なかったんだから。こうして男の子の運転でドライブ出来るんだから良かったじゃない。」
 いつの間にか玲子は船の上で同行することに逡巡してたことが嘘のように旅行を楽しみ初めているのだった。

茉莉

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る