支笏湖の夜

妄想小説


男女六人 卒業旅行



 四十六

 バーベキューを終えて皆は残ったビールだけ持ってコテージに入って呑み直すことにしたのだった。茉莉はビールはもう飽きたから別のお酒を捜してくると、一人コテージを出て行く。一緒に行こうかと申し出た哲平の事も断わって一人で行くからいいと言い張ったのだった。
 コテージは二段ベッドが二組入った寝室が二つあって、六人で泊るのに充分な広さがあった。その二つの寝室の間に、暖炉の付いた広いリビングがあってさすがに真夏の今は暖炉は使われていない。その暖炉の前の小さなテーブルで六人は呑み直しを始めたのだった。
 「確かに、ビールは夕方から大分呑んだからちょっと飽きて来たなあ。」
 そう言いながらも哲平は更に紙コップに新しく一杯を注ぎ足している。
 「そう言えば、旅行に来てから皆んなで呑むのは初めてだな、これが。」
 「俺たち男同士では毎晩、呑んでたけどな。」
 優弥と哲平がビールを酌み交わしながら話している。そこへレジ袋をぶら下げた茉莉が戻ってきた。
 「皆んな、ビールはもう飽きてきたんじゃないかと思って、ウィスキーと氷を持って来てあげたわよ。」
 「おっ。気が利くなあ、茉莉は。」
 「茉莉もウィスキーにするのか?」
 「ううん、私はこれ。」

モスコミュール

 袋の中から鉄製のマグカップにたっぷり入った一杯を取り出す。
 「なんだい、そりゃあ?」
 「モスコミュールよ。レストハウスで作って貰ったの。」
 「へえ、さすが茉莉はお洒落なもの知ってるんだな。」
 哲平が感心しながら皆にオンザロックを作っている。女の子たちも茉莉にモスコミュールを分けて貰ったりウィスキーを注いで貰ったりそれぞれに飲み物を手にしている。
 「じゃ、カンパーイ。」
 哲平の音頭で皆が紙コップを合せる。

茉莉

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