妄想小説
男女六人 卒業旅行
十二
一方、最後にペアになった優弥と知世は日本基督教団の函館教会の聖堂内に居た。男性と二人だけで歩くという経験も初めてだった知世は最初から緊張気味だった。それが明るい外から急に薄暗い堂内に男女二人きりで居ると思うと更に緊張が増してくる。そんな気持ちを打ち消すようにわざと明るく優弥に話しかけようとする知世だった。
「へえ。意外と内部は現代風なのね、この教会。」
「ふうん。こういうのは現代風なんだ。俺は教会の中なんか観るの初めてだから。」
「ほら、ゴチック様式とかロマネスク様式とか、よくあるじゃない。」
「よくあるんだ・・・。}
「いやねえ。歴史の授業とか美術の授業とかで習わなかった?」
「そういう授業の時間は殆ど寝てたからな。」
「優弥はスポーツ以外の事には殆ど興味がなかったのね。」
「ああ、そう・・・だな。」
「私は真逆だわ。スポーツは全く興味なかったもの。運動音痴で何も得意じゃなかったし。」
「なあ、知世さ。お前、本当は哲平と二人で周りたかったんだろ?」
「え、何でそんなこと・・・。」
「ふふふ。見てりゃ判るさ。バレバレだよ、お前の視線は。もっとも哲平には全く通じてねえけどな。」
「い、いやだわ・・・。私はただ、哲平が皆んなと一緒に旅行しようっていうから・・・。」
「ま、いいさ。旅行はまだまだこれからなんだし。今度一緒になれる機会を作ってやるからさ。」
「え・・・・。ねえ、優弥こそ茉莉と一緒が良かったんじゃないの。中学の頃だってずっと噂されてたし。」
「只の噂話だけだよ、そんなの。男子と女子のそれぞれバスケ部キャプテンだったってだけだし。誰かが言いふらしてるみたいに付き合ってた訳でもないしな。」
「そうなの? お似合いのカップルに見えたけど。」
「思い込みってやつさ。他人の気持ちなんて所詮他人にはわからないもんさ。さ、そろそろ次のところへ行ってみるか。」
「ええ、いいわよ。」
「教会の中って、どうも苦手だな。中を巡るのは止めて、三つの教会が見下ろせる丘の上の方へ行ってみないか。」
「そうね。優弥がそっちがいいっていうんなら、私は別に。」
知世はあまり優弥に近づきすぎないように先に立って出口の扉に向かってゆくのだった。
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