妄想小説
男女六人 卒業旅行
十三
待合せに決めていた丘の上の教会が見下ろせる広場に最後にやって来たのは琢也と茉莉の二人だった。
「おーい、茉莉に琢也っ。遅いじゃないかぁ。」
「おう、哲平。済まん。済まん。ちょっと函館教会を観てたら、つい遅くなっちゃった。」
「玲子も知世も、もうこっちに来てたのね。」
「おい、茉莉っ。ハリストス正教会って中、入れなかったぜ。」
「あら、言ってなかったかしら。あそこは予約をいれてないと、中は見せてくれないの。」
「なんだよ、それっ。知ってんなら先に言っとけよ。もう次へ行こうぜ。今度は何処だい?」
「ううん。そうね。五稜郭公園に行きましょうよ。」
「五稜郭・・・? どこにあるんだい、それ。」
「函館駅のほうへ戻ってその先。5kmぐらいかしら。」
「たしか、五稜郭タワーっていうおおきな塔があるところよね、茉莉。」
「そうよ、知世。だからあまり迷わないと思うわ。」
「なら、今度は俺が運転するよ。女の子等も少しメンバーを替えてみたらどうだ。」
「じゃ、私が今度は女一人で乗るから、知世は茉莉と一緒に乗れば?」
「それじゃ、知世。一緒に琢也が運転する車に乗りましょう。」
「そしたら玲子は俺が運転する車だな。」
「わかったわ、哲平。」
玲子が今度は哲平が運転するという赤い方の車の後部座席に乗ろうとすると、優弥が指で助手席の方を指し示す。
「折角、哲平が運転して乗せて呉れるっていうんだから女の子は助手席だろ?」
「そうね、いいわ。優弥は後ろでいいの?」
「別に。全然、構わねえよ。さ、行こうぜ。」
もう一台の方には既に琢也が運転席に乗り込んで待っている。当然の様に助手席に向おうとする茉莉を知世が強引に引っ張って一緒に後部座席に乗り込む。
「琢也っ。私たち、二人とも後ろでいいの?」
「いや、さっきも女の子は二人で後ろだったし。」
そう言いながらも茉莉のスカートがあまりに短いので琢也は気が気でない。バックミラーを直す振りをしながらちらっと茉莉が後ろに腰掛けるところを覗いてしまう。
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