妄想小説
男女六人 卒業旅行
七
もう一台の車では優弥が助手席の茉莉のそれでなくても短いスカートが徐々にずり上って行くのを気にしながらも運転に集中しようとしていた。
山へ登っていく急なカーブを曲がろうとして突然対向車がセンターラインを割り込んでくるのに気づいて優弥は咄嗟にハンドルを切って除ける。
「あっ、危ねえなあ。大丈夫だった?」
「ええ、でもびっくりした。優弥は運転、上手いのね。」
「まあな。北海道じゃ運転に慣れてない旅行者も多いから気を付けないとな。」
茉莉が優弥のハンドル操作の際に横に思いっ切りよろけてずり上ってしまったスカートの裾をやっと元に引っ張り下ろしているのを優弥は横目でちらっとみる。
「俺は運送屋のバイトで結構トラック運転してたから慣れてるんで大丈夫だぜ。優弥はなんでそんなに運転に慣れてるんだ?」
「俺も大学のクラブで人の送り迎え、結構やらされてたからな。」
「あらっ。優弥の大学のクラブって、まだバスケやってんの?」
「もう辞めたけどな。それにレギュラーじゃなかったから選手の送り迎えばっか。まあ、マネージャーに近かったかな。」
「そうなんだ・・・。」
「茉莉はどのくらい運転してるんだ?」
「ウチに居る時は、それこそパパの送り迎えばっか。お酒呑んで遅くに帰ってくるとタクシー代わりに迎えを頼むんだもの。」
「まあ、それじゃあ運転はそこそこ大丈夫ってことだな。」
「なあ、哲平。この旅行、最初から仕組んでんだろ。偶然に出遭ったんじゃなくて・・・。」
「え・・・? 気づいてたのか。」
「お前と知世の目配せでな。わっかりやすいよな、お前等二人。」
「や、実はさ。知世から女三人で北海道旅行をするって聞いてさ。それで同じ日程で琢也とお前を誘ったんだよ。知世には黙ってろって言ってさ。」
「だろうな。知世がそんな計算するわけないからな・・・。」
優弥がそう言うのを聞いて、茉莉はふっと顔色を悟られないように窓の外へ視線をずらすのだった。
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