美人女医と看護師に仕組まれた罠
五十二
「あ、明日香先生・・・。お、お早うございます。」
「ああ、日菜子ちゃん・・・。大丈夫?」
先に診察室に入っていた明日香の前に日菜子が出勤してきてナース服姿で現れたのだ。
「大丈夫って、何がですか?」
「何って・・・? ゆうべの・・・。」
「ゆうべは先生は当直だったんですよね。」
「え? ええ、そう。日菜子ちゃんも夜、来たのよね。ここへ。」
「いいえ。私は夜は来てませんけど・・・。明日香先生が当直だったので。」
「え、あ、そう。そうね・・・。日菜子ちゃんが何だか、ちょっとやつれてるみたいに感じたから。」
「え、わたし、やつれてます? 大丈夫ですよ。先生の方こそ、何だか疲れ切っているみたい。」
「いや・・・。私も大丈夫よ。今日は定例の回診は無い日だったわよね。」
「ええ、そうです。でも川谷さんと磯部さんが個別に相談があるそうです。」
「え、川谷さんと磯部さん・・・?」
嫌な予感がする明日香なのだった。
「あ、川谷さん。相談って、どうかしましたか?」
日菜子に連れられて川谷吾作が診察室へ入って来ると、明日香は努めて平静を装って心の動揺を隠す。前夜、鬼塚医師に連れられてリハビリー訓練室に入った際に確かに居た記憶があるからだ。
「やあ、明日香先生。ちょっと個人的に相談がありましてね。」
吾作の方もゆうべの出来事には一切触れない様子だった。しかし『個人的に』というところだけ語気を強めて視線を傍らの日菜子のほうへちらっと向ける。明日香はすぐに権蔵の時の事を思い出していた。
「個人的に・・・? じゃあ、日菜子ちゃん。ちょっとだけ、席を外していてくれる?」
「ああ、明日香先生。わかりました。廊下に出ていますので、何か用がありましたら声を掛けてください。」
そう言って、日菜子は診察室のドアを閉めて出てゆく。
「えーっと、それで何でしょうか、川谷さん。」
「先生。その白衣の下はミニのワンピースですよね。白衣を脱いで見せて貰えませんか?」
「え? 何を言っているんですか、川谷さん。」
「いやね。先生は私にサービスをしてあげたいと思っているんじゃないかと思いましてね。」
「サービス? ど、どうして・・・ですか。」
明日香は川谷の言い方に只ならぬものを感じ始めていた。
「日菜子ちゃんはすぐ近くの廊下に居るんでしょ。サービスじゃなかったら、これについての説明を日菜子ちゃんにして貰ってもいいんですよ。」
そう言って、吾作は手にしていた封筒から一枚の写真を取り出して明日香に見せる。
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