美人女医と看護師に仕組まれた罠
十一
太腿の間に手を差し込まれてしまった日菜子は思わず腿を少し開いてしまっていた。そのせいで権蔵と留男の二人に裾の奥の下着を覗かれてしまっているのに気づいていなかった。
「はい、終わりましたよっ。川谷さん。」
明日香が注射器を脇に置いて針を抜いた吾作の二の腕に絆創膏を貼っている間も、吾作は日菜子の恋人繋ぎで握り締めた手を放そうとしなかった。
「か、川谷さん。川谷さんったら・・・。も、もう手を放して大丈夫よ。」
日菜子は両手で吾作がしっかりと握りしめている手を解こうとする。そのせいで両手が使えない日菜子はミニスカートの裾からずっと下着が見えてしまっているのに気づかない。
権蔵と留男はうまく行ったとばかりに、顔を見合わせてニヤリとするのだった。
「日菜子ちゃん。前に貴女、私が不用意に屈んでスカートの奥を覗かれちゃったので注意しなくちゃって言ってたでしょ。さっきは貴女が男たちにスカートの中、ばっちり覗かれてたわよ。」
「え、い、何時・・・ですか?」
「川谷さんに私が注射した瞬間。川谷さんに太腿に手を置かれて、貴女パニックになって脚開いちゃってたわよ。」
「えーっ、あの時? だって先生が動かないでって言うから・・・。」
「あれは川谷さんに言ったのよ。注射中に動こうとするから。」
「そ、そうだったんですかあ。あ、もしかして・・・。」
「川谷さんが注射するときに手を握ってて欲しいって言ってたの・・・。あれ、もしかしたら態と?」
「かもしれないわね。」
「あの、恋人繋ぎっていうんですかね。指と指を絡ませるようにして手を繋ぐの。あれって、両方が手を放そうとしない限り解けないんですよね。私、川谷さんが何時までも手を緩めてくれないので、片手が自由にならなくて・・・。それで急に太腿に触られたんでどうしていいか分からなくて・・・。」
「あの人達には当分、気を許さないように気をつけていたほうがいいかもしれないわね。」
「そう・・・ですね。」
「あ、そう言えば日菜子ちゃん。今夜が最初の当直じゃなかったかしら。」
「ええ、そうですけど。」
「大丈夫かしらね。一人で・・・。」
「えーっ? まさか。当直中に襲われるとか・・・ですかね。ま、大丈夫ですよぉ。警備の人も居ますから。何かあったらすぐ電話しちゃいます。」
「そうね。警備の人も居るものね。それに幾ら何でもお年寄りばかりだものね。でも、用心しておくことは大事よ。」
「はい、わかりました。先生。注意しまーすっ。」
明るく受け流した日菜子ではあったが、明日香は嫌な予感に駆られているのだった。
「へっへっへっ。うまく行ったなぁ。日菜子って看護婦。パンツ丸見えにしてたもんな。」
「吾作。お前の演技もなかなかだったぞ。本気で注射が怖いように見えたぜ。」
「あ、いやあ。実は、俺。本当に注射は苦手なんだ。でも恋人繋ぎってのはうまいやり方だなあ。相手が解こうとしてもこっちが手を緩めないと手が離せないんだからな。」
「実はな。さっきのは予行演習でもあるんだ。実はな、今夜ちょっと作戦があってな。」
権蔵は辺りを見回して誰も聞いてないのを確認してから吾作と留男を近くに呼び寄せ、囁くような声で鬼塚医師から授かったその夜の作戦を耳打ちするのだった。
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