美人女医と看護師に仕組まれた罠
二十三
「明日香先生。芦田権蔵さんが相談にいらしてますが。」
「芦田さん? 分ったわ、お連れして、日菜子ちゃん。」
その日は通常の回診の日ではなかったが、個人的に明日香先生に相談したいことがあると権蔵から申し出を受けた日菜子なのだった。診察室の外の廊下で待つ権蔵を日菜子が車椅子を押して明日香の前まで連れてくる。
「どうしました、芦田さん。何処か具合の悪いところでもおありですか?」
明日香にそう訊ねられた権蔵は、チラっと日菜子の方を見てから気まずそうに言う。
「あの、先生。ちょっと個人的なことで相談したいので・・・。」
権蔵の雰囲気に明日香はすぐに察した。
「ああ・・・。じゃ、日菜子ちゃん。ちょっと外しておいてくれる?」
「え? あ、判りました。明日香先生。失礼します。」
権蔵に向けてぺこりと軽く会釈をすると日菜子は診察室を出て扉を閉める。日菜子が去って行く足音が消えてからおもむろに明日香は切り出した。
「で、どうしました。芦田さん?」
「実はですね。あの、何と言いますか・・・。」
権蔵は何か切り出そうとするのだが、言いにくそうにしている。
「いいですよ。医者と患者の関係ですから。何を相談されてもここだけのことにしますから。」
明日香は権蔵が話しやすいように優しく語りかける。
「あの、あっしのあそこの事なんですが・・・。」
「あそこ・・・?」
「ああ、つまりその・・・男性自身のこってすよ。」
明日香は何と応対していいかちょっと躊躇したが、なるべく医学的に冷静に対処しようと心に決める。
「男性自身とは、つまりペニスのことですね。」
明日香は出来る限りさらっと口にしたつもりだった。
「あの先生・・・。あれは、齢を取ると共に立たなくなるもんなんですか?」
「立たなくって・・・。勃起のことを仰ってるんですね。」
「ええ。まあ、そういう事です。」
「うーん。医学的にはED(イー・ディー)って言って、つまり勃起不全のことを差すのですが、ある程度の年齢になってくると、これは病気としては扱いません。誰しも勃起しにくくなる傾向にはあります。」
「だけど同じ様な年齢でもちゃんと立たせることが出来る奴はいますよね。」
明日香は入所している権蔵の仲間である川谷吾作や磯部留男の事を言っているのだと察する。
「ああ、それはかなり個人差がありますからね。年齢だけで一概に何歳になったらこうとか言えるものではありませんから。」
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