明日香あきれ顔

美人女医と看護師に仕組まれた罠




 二十四

 「先生。あっしのモノはさっき仰ったそのEDとかいうのに当たるのかどうか、診察しては頂けませんか?」
 「えっ? 貴方のを・・・ですか?」
 「先生は内科がご専門だとか。でもこの介護施設ではたった一人のお医者さんで、患者である私どもは専門の如何に関わらず診て頂けると聞いているんですが・・・。」
 「えっ、まあ、そうですが・・・。わ、わかりました。診るだけは見てみましょう。」
 明日香は困ったことになったと思いながらも、(自分は医者で相手はあくまでも患者なのだから)と思うことにする。権蔵は明日香が困ったような顔をしながら俯いて思案しているのを盗み見てひそかにニヤリとほくそ笑む。
 恥ずかしがる風を装いながら、権蔵はズボンのベルトを緩めチャックを下ろすと、ズボンとトランクスを膝まで引き下ろす。
 「はあ、確かに勃起はしてませんね。」
 権蔵の下半身をちらっとだけ見て即座に明日香は言い放つ。
 「先生。さすがにあっしも何も刺激がないと無理です。先生。ちょっとだけでいいですからその膝を開いてスカートの奥を見してくれませんか。」
 「えっ、私のスカートの奥をですか? だ、駄目です。そんな事・・・。」
 「ちらっとだけでもいいんです。男はそういうので反応するんです。」
 「ちらっとでも駄目です。幾ら医者と患者の関係であっても・・・。そうだ。いいものがあるわ。」
 明日香は日菜子が川谷吾作のところから持ってきたというエロ雑誌の事を思い出したのだった。
 「そこの診察台に横になって楽な姿勢になっててください。えーっと、こういうのだったらその気になれますか?」
 そう言って診察台に仰向けになってペニスを露出している権蔵にエロ雑誌を手渡す。
 「お、せ、先生っ。こんないいの、持ってるんですね。」
 「私のじゃありませんよ。入所者の一人が持っていたものです。こういうの、お好きですか?」
 「てへっ。好きかって言われると・・・。まあ、嫌いじゃないですね。」
 権蔵のペニスが一気に鎌首を擡げ、膨らみ始めているのを明日香も見逃さなかった。
 「一応、反応はしてるようですね。EDとまでは言えないかもしれません。」
 「先生。触って硬さを確かめてみてくれませんか。正常な勃起なのかどうか・・・。」
 「えっ、触るんですか? うーん、・・・。じゃ、ちょっと待ってください。」
 明日香は診察机の抽斗から外科用施術の際に使うゴム手袋を取り出して手に嵌める。それを権蔵は横目でちらっと見る。
 (ちぇっ。ゴム手袋越しかあ。ま、それでも触って貰えるならよしとするか・・・。)

ED触診

 「じゃ、芦田さん。失礼しますよ。」
 そう言うと、明日香は顔をなるべく遠ざけるように仰け反りながら親指と人差し指で屹立とまではいえないが一応勃起してきている権蔵のペニスを抓んでみる。しかしその感触が権蔵に伝わると、一気に勃起度は増してくるのだった。
 「まあ、これぐらいなら年相応以上な元気さだと思いますよ。あまり心配することはありませんよ。もういいですよ。着衣を戻してくださって。」
 権蔵は、もう一度ぎゅっと握り締めてくださいと言いたいのをぐっとこらえてしぶしぶトランクスとズボンを引き上げる。
 「先生。今は勃起不全を治療する薬ってのがあるそうですね。」
 「えっ? ああ、シルデナフィルのことですね。世間一般にはバイアグラって言っている勃起促進剤です。」
 「ああ、そうそう。そのバイなんとかってやつ。先生。それをあっしに処方して貰う訳にはいかないでしょうか。」
 「え、バイアグラをですか・・・? でも芦田さん。そんなの必要はないでしょう。」
 「いや、男ってものは幾つになったって他の奴には負けたくないもんなんです。あっしだって若い頃はこんなんじゃなくていつもビンビンに立ってたもんです。もう一度、昔に戻りたいんです。」
 「えーっと・・・。芦田さんは確か心臓に基礎疾患がおありですよね。バイアグラは心臓に負担を掛けるので、芦田さんのような方には処方出来ないんですよ。」
 「ええっ? そうなんですか・・・。」
 しょげ返っている様子の権蔵を見て、明日香は慰めるように声を掛ける。
 「それだけ勃起出来れば十分ですよ。もういいお歳なんだから他人と競うなんてことは考えずに無理はしないことです。度を過ぎなければお独りでなさるのは構いませんよ。」
 明日香は暗に女性と性行為は出来ないが自慰なら可能だと老人を慰めたつもりだった。
 「先生。このことはご内密に。特にあの若い看護婦さんには・・・。じゃないと恥ずかしくて顔も合わせられなくなりそうなんで・・・。」
 「大丈夫ですよ、芦田さん。医師には守秘義務というものがありますから。ご心配なさらずに。」
 そう言って明日香は権蔵に優しく微笑みかけるのだった。

 「明日香先生。芦田さんの相談って、何だったんですか?」
 芦田が診察室を出たのを聞いて、戻って来た日菜子は興味津々に明日香に訊ねたのだった。
 「うーん。まあ、個人的な悩みの相談って感じかな。でも、日菜子ちゃんにだって守秘義務ってのがあるから、迂闊に患者さんの相談の中身は明かせないの。秘密ってほどのことじゃないんだけど・・・。」
 明日香は必要以上に日菜子が興味を持たないように遠回しに諭しておく。本心では、日菜子にだったら権蔵が勃起不全の心配をしているというぐらいは教えてもいいかと思っていたのだ。しかし日菜子が権蔵に遭った際に、顔色に出さないとも限らないので内緒にしておくことにしたのだった。
 「芦田さんって、意外と性欲は強い方ですよね。」
 日菜子は最初に検温に立ち会った際にお尻を触られたことを思い出して何気なくそうひと言口にしたのだった。しかし明日香にはそれほど性欲の強い男性が勃起不全の心配をするというのが何となくしっくりこないのだった。
 「それと、今晩は明日香先生が最初の当直ですよね。大丈夫・・・ですかね?」
 「大丈夫って、何が?」
 「いや、何がって特に何かある訳じゃないですけど。結構、エッチなこと考えてる老人男性が多いみたいだから。」
 「ふふふ。心配症ね、日菜子ちゃんは。」
 日菜子は明日香に権蔵にお尻を触られたことは話していたが、留男に抱きつかれて胸を思いっきり触られたことについては話していないのだった。
 「油断しちゃ駄目ですよ。あの老人男性たちは・・・。」
 それが精一杯の明日香への日菜子の忠告なのだった。

明日香

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