美人女医と看護師に仕組まれた罠
十
「ええ、高齢者肺炎球菌ワクチンならここで打ってあげれるわよ。でも川谷さんがワクチンを打つのに三人揃ってここへ来ているの?」
川谷吾作がワクチンが未接種だというので打って欲しいと芦田権蔵と磯部留男の二人が連れ添ってやって来たので、不審げに明日香が訊ねる。
「あ、いや。こいつ、注射が大の苦手でね。一人じゃ絶対来られないって言うんで俺たち二人が付き添いで来たって訳なんですよ。」
「す、済みません。明日香先生。あっしは昔っから注射だけは苦手で。ワクチンも怖いからずっと先延ばしにしてきたんですけど、こいつらが絶対に受けておかなくちゃ駄目だって言うから。」
「川谷さん。高齢者肺炎球菌ワクチンはある年齢までに絶対に接種しておかなくちゃならないものよ。皆さん受けてるんだから、怖いとか言ってないで思い切って受けるのよ。わかった?」
「あ、先生。そしたら注射する間だけ、この若い看護婦さんに手をぎゅっと握ってて貰えませんか?」
「え、手を・・・?」
明日香医師と日菜子看護師はお互い顔を見合わせる。
「日菜子ちゃん。しょうがないから貴女、手を握っててあげなさいな。」
「え、わたしが・・・ですか? うーん、しょうがないなあ。」
「はいっ。じゃ、腕。捲って。」
明日香はワクチン注射を準備すると、吾作が二の腕を捲って出したところにアルコール消毒をする。それだけで吾作は小刻みに身体を震わせている。
「か、看護婦さ~ん。」
「川谷さん。はい、手を出して。」
日菜子が注射を受ける方の手を両手に包み込もうとすると、川谷はその手の指を大きく開いて日菜子の片方の手を恋人繋ぎでしっかりと握りしめる。
「あら、そんなにきつく握り締めなくても・・・。」
そう言いながらも日菜子はしっかり握られた手を解くことが出来なくなってしまう。
「じゃ、川谷さん。いくわよ。ちょっとチクッとするだけだから。動かないでね。」
明日香がそう言って注射器の針を上に向けると、吾作は肩を縮こませながら更に強く日菜子の手を握り締める。
「じゃ、行きますっ。はいっ。」
明日香の持った注射器の針が吾作の二の腕に刺さった瞬間、吾作は悲鳴を挙げて目の前の日菜子の太腿の方に手を伸ばす。
「あ、駄目よ。動かないで。」
突然、ミニスカートから剥き出しの太腿の上に吾作の手が伸びてきて内股をしっかり掴んだので日菜子の方が悲鳴を挙げそうになる。しかし明日香の(動かないで)のひと言が自分に言われたものと思い、その手を払いのけることが出来ない。しかも片手は吾作にしっかりと恋人繋ぎをされているので立ち上がることさえ出来ないのだった。
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