美人女医と看護師に仕組まれた罠
十八
権蔵はその日臨時で特別養護センタに訪ねてきていた鬼塚医師の部屋に来ていた。そこは鬼塚が特養センタ長である後藤睦夫に特別に用意させていた部屋で、明日香が入居老人たちの診察に使っている医務室とは別の部屋だった。
「じゃ、この二枚の写真だけ渡しておく。あのビデオ映像とデジタル画像の元データは私が安全の為に預かっておく。その二枚があればオナニーに使うのでも充分だろ。」
「へ。そりゃ、勿論ですとも。あの二人にも渡しておきます。」
「言っておくが、くれぐれも明日香医師や日菜子看護師、それからヘルパーたちもだが見つかったりしないように気をつけるんだぞ。万が一見つかったとしても裏ビデオの業者から手に入れた昔の写真だと誤魔化すんだ。いいな。」
「へえ。わかりやした。ねえ、鬼塚先生。今度は明日香先生にも同じ事、出来ませんかね?」
「ふん。やっぱりあの先生もものにしたいのか。しかし相手は医者だからな。看護婦の小娘とは訳が違うからな。慎重には慎重をきたさないとな。ま、その時が来たらいい思いをさせてやるから愉しみに待ってるんだな。」
権蔵を部屋に帰らせた後、鬼塚は今度は所長の後藤睦男を電話で呼び出すのだった。
「鬼塚先生。あの例の機械のことでしょうか?」
鬼塚の為に特別に用意した部屋に呼び出された所長の後藤睦男は慎重に伺いを立てる。
「ああ、そうだ。設置の状況を説明してくれ。」
「でしたら、もう既に準備万端に整っております。完全空調システムは発注どおりのものが既に当直室に設置済みです。あの機械の操作は外部の機械室と、それからこちらの部屋にも用意しましたリモコン操作盤で同じ様にいつでも操作が可能です。それから当直室のモニタカメラですが、部屋の四隅に目立たぬように据え付けてありますし、その画像はこの部屋のこのモニタで何時でもご覧いただけます。」
「ふむ。そうか。あの部屋は窓は開かないようになっていたよな。」
「はい、ご指示の通りにあの部屋の防音工事をした時に完全に固定してあります。」
「ならば、あの部屋の換気はこのリモコンでしか出来ないということだな。」
「仰る通りでございます。」
「あ、はっきりとは言わなかったが、この部屋の工事のことは・・・。」
「内密にということですね。承知致しております。誰にも洩れないようになって、私と先生しか知らないようになってございます。」
「よろしい。ご苦労だった。君の処遇については今度の理事会でもよく言っておくから。」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
後藤所長を下がらせた後、鬼塚は当直室の空調のリモコン操作を一通り試してみる。来るべき明日香医師の当直の夜への準備は万端に整い始めているのだった。
次へ 先頭へ